2015 Fiscal Year Annual Research Report
アモルファス酸化物半導体の双安定性と不安定性の起源解明および応用開拓
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15H06207
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
井手 啓介 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助教 (70752799)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | アモルファス酸化物半導体 / a-IGZO / 過剰酸素 / 不純物水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、アモルファス酸化物 In-Ga-Zn-O半導体の特異な電子構造・欠陥構造と、それに伴う双安定性を明らかにすることで、薄膜トランジスタに応用した際の不安定性起源を解明することにある。 本年度において、アモルファス酸化物中に存在しうる過剰な酸素の化学状態を明らかにした。これら酸素は、アモルファス構造に起因し膜中へ容易に取れこまれうることが、第一原理計算や実験において今まで明らかにされてきた。しかしながら、超薄膜およびアモルファス構造であるために、その検出の困難さから化学状態の解明はされてこなかった。我々は、高感度の脱離ガス試験やオゾン処理、硬X線光電子分光といった方法を用いることで、酸化物薄膜中の酸素の状態を決めることに成功した。成膜時の供給酸素過多による取り込みでは分子状の酸素が膜中に存在し、強酸化条件下における後処理ではO^2-より正の状態の原子状酸素として取り込まれていた。そしてそれら酸素はともに、TFTの閾値を大きくする作用があることが分かった。 また、さらに成膜時の背圧やスパッタリングガスを制御することによりアモルファス酸化物中の水素の役割を明らかにした。これら水素は、その強い還元作用から、成膜時酸素分圧の最適値へ大きく影響を与えることが分かった。さらに還元を進めるとInの金属状態が光電子分光法により確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り過剰な酸素の導入方法の確立および水素の導入実験に関しては順調に進展している。当初計画した水素イオン注入実験に関して、その必要性が今現在ないと判断し、必要に迫られた際の今後の手段としている。 論文の執筆がやや遅れているが、28年度の上期には投稿・出版を見込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、より応用的な内容とし、広く問題視されているアモルファス酸化物半導体の光照射に対する挙動を調査する。27年度に明らかにした、水素や酸素の導入方法や効果を応用することで、その起源を明らかにする。 また、これらの挙動を理解したうえで新規アプリケーションの創出を行う。
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Research Products
(9 results)