2016 Fiscal Year Annual Research Report
A study on the possibility of defending scientific realism by analyzing the robustness of science
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15H06240
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
野内 玲 信州大学, 医学部, 助教(特定雇用) (60757780)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 科学哲学 / 科学的実在論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、前年度に実施した文献調査にもとに、頑健性概念の分析と科学の営みのモデル化を行ない、頑健性モデルによって科学的実在論を擁護することを試みた。その際、科学研究の個別ケースとして分子生物学の事例(メソソームの実在)を中心的に検討し、奇跡論法という科学的実在論の道具立てが頑健性によって擁護できるかを分析・考察した。 メソソームの事例は文献調査を通じて着想を得たものであり、以下の点で重要な成果があった。1) 当該論争では物理学の事例がこれまで多く取り上げているが、本研究によって分野間での比較検討が可能となった。2) 電子顕微鏡による細胞観察という容易に実行可能な研究に基づく事例であって、多くの科学者がメソソームの実在に関する議論に参加しているため、科学コミュニティにおける科学的知識の浸透過程の分析という課題を十分に実行することが可能となった。これらの成果は科学基礎論学会と、科学的実在論論争の国際ワークショップにおける講演という形で発表した。 上記の研究を通して、頑健性という側面から科学的実在論の擁護を検討したが、必ずしも科学的実在論にとって肯定的な結論には至らなかった。例えば、科学的実在論では、理論や観察の収束が科学的知識の信頼性を保証するという見解を採用するが、メソソームの事例では、観察の収束とその頑健性は観察対象の実在性を担保しないことが分かった。もちろん、最終的にはメソソームの実在性を否定する結論の「収束」が見られており、頑健性は科学的知識の受容と浸透に際して重要な指標となっていることは確かである。そのため、科学的実在論を擁護するためには、このような科学研究の動的発展の理解を組み込んだ形での方策を探る必要があるという結論が得られた。上位の結論は論文としてまとめ、科学哲学系学術誌への投稿準備を進めている。
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Research Progress Status |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(3 results)