2015 Fiscal Year Annual Research Report
支配株主による締出しの場面における株主間の利害調整
Project/Area Number |
15H06241
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
寺前 慎太郎 信州大学, 学術研究院社会科学系, 講師 (00756471)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 少数株主の締出し / 完全子会社 / 株主間の利害調整 / 会社法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、支配株主による締出し(特に、上場子会社の完全子会社化)の場面を念頭に置いて、当事会社、裁判所、立法機関の役割分担という観点から、株主間の利害調整のあり方を探求するものである。その一環として、平成27年度においては、(1)本研究の前提となるわが国における議論状況の確認と、(2)ドイツ法における少数株主の締出制度に関する調査・分析を行った。 まず、(1)については、本研究の遂行上重要な進展が関連する学説や裁判例に見られたことから、研究計画の内容を一部変更し、文献研究を集中的に実施した。その結果として、本研究の内容と密接に関連するマネジメント・バイアウト(MBO)の事例を中心に、買収対象会社の社外取締役などで構成される特別委員会の重要性が、理論と実務の両面において、予想以上のペースで高まっていることを確認できた。 次に、(2)については、当初の研究計画に沿って、1965年株式法で規律されている少数株主の締出制度(いわゆる株式法上の締出し)を中心に、ドイツ法の状況について調査・分析を行った。ここでの調査・分析は文献研究によって実施し、その結果として、同制度の全体像とそこで少数株主に認められる救済手段に関する議論状況を確認できた。ただ、少数株主の救済に関する議論は、もともとその他の場面を想定したものを締出しの場面にも準用していることが多く、その全容を解明するまでには至らなかった。なお、調査過程において、ドイツの制定法で少数株主の締出しのために用意されている他の手法(買収法上の締出しと合併法上の締出し)は、ドイツ国内における重要度が株式法上の締出しほど高くないことも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記で記載した通り、ドイツ法の調査において、追加調査が必要になる範囲が当初の予想よりも広がったことから、その部分に関わる研究成果の公表が遅れ、本研究全体の進捗にも影響が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、引き続き、ドイツ法の調査を実施することを予定している。平成27年度の調査によって、株式法上の締出し以外の手法を対象としたドイツ法の調査の重要性がそれほど高くないことが明らかになったため、同年度に生じた進捗状況の遅れは、本研究全体の進行に大きな影響をもたらすことはないと考えられる。そして、ドイツ法の調査・分析が終了した段階で、本研究以前に公表した研究(デラウェア州法を対象とした比較法研究)の成果や隣接諸科学の知見を含めた総合的な研究に移行したい。
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