2015 Fiscal Year Annual Research Report
ワーキングメモリにおける手続き的表象の制御メカニズムに関する実験心理学的研究
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15H06306
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐伯 恵里奈 京都大学, 教育学研究科(研究院), 助教 (90424746)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 実験心理学 / 意識 / 認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
日常生活は、今行う課題で必要な宣言的表象(物事など何かについての知識)と手続き的表象(何かを行うやり方についての知識)を組み合わせ、操作することで成り立っている。必要となる表象をうまく制御できなければ日常生活を円滑に送ることは難しいため、表象の制御メカニズムの解明はヒトの認知過程を理解するのに不可欠である。本年度の研究では、これまで研究が進んでいない手続き的表象の制御メカニズムを検討するため、タスクスイッチングのパラダイムをベースにした新しい実験パラダイム、手続きセットスイッチ課題を考案し、手続き的表象の内的な制御可能性を検討するための認知実験を実施した。 タスクスイッチングパラダイムでは、例えば数字の奇数・偶数判断をDとFのキーで、アルファベットの子音・母音判断はJとKのキーで反応することを求め、それらの課題セットを切り替えるときに生じる認知コスト(反応時間の遅延、エラーの増加)を測定する。本研究では、判断次元は一定であるが(例、数字の奇数・偶数判断)、反応キーのセットを2つ用意し、これらのキーセットの切り替えを求めることで、手続き的側面だけの切り替えを求める課題を用いた実験を行った。手続き的表象の内的な制御可能性を検討するために、試行毎に次に用いるキーセットを示す手掛かりを与え、手掛かりから刺激呈示までの時間を操作した。その結果、手続きセットスイッチング課題でも、手掛かりから刺激呈示までの時間が長く、次に用いるキーセットを準備する機会があると、反応時間が短くなることが示され、手続き的表象も内的に制御可能であること、一方で、準備時間が長くてもキーセットの切り替えのコストは消失せず、刺激の呈示という外的なトリガーが手続き的表象の設定に必要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに考案した手続きセットスイッチング課題を用いて、手掛かりと刺激呈示までの時間を操作する実験を実施し、本研究の目的のひとつである、手続き的表象の内的な制御可能性の検討を進めた。本実験で示された準備時間の増加に伴う反応時間の減少は、手続き的表象がある程度まで内的に制御できることを示しており、手続き的表象の制御メカニズムを考察するにあたり、重要な知見になるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
準備時間の操作による、手続き的表象の内的制御可能性の検討をさらに進めるとともに、行為系列を間違いなく産出するには、系列を制御するメカニズムがうまく働くことが必要であるため、反応を制御する表象である手続き的表象において、系列がどのように制御されているかを検討するための実験を当初の計画通り実施する。
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Research Products
(1 results)