2015 Fiscal Year Annual Research Report
光熱変換ナノ構造薄膜近傍に発生するマランゴニ回転流に関する研究
Project/Area Number |
15H06310
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
名村 今日子 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20756803)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | マランゴニ対流 / マイクロバブル / 金ナノ粒子 / 光熱変換 / 熱プラズモニック効果 / マイクロ流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はマランゴニ回転流による薄膜近傍への粒子捕捉能力を把握するため,照射光強度と光照射位置がマイクロバブル周辺に発生するマランゴニ対流に与える影響について系統的に調べた.そしてマイクロバブル周辺に発生する光誘起マランゴニ対流の流れのモード変化を明らかにした. 実験は水で満たされたマイクロチャンバー内で行った.金ナノ粒子薄膜の光熱変換特性を利用して,マイクロチャンバー内に直径50マイクロメートル程度のマイクロバブルを生成した.バブルの周辺でレーザー照射位置と強度を系統的に変化させると,バブル周辺に発生するマランゴニ対流の様子が大きく変化した. まず,照射光強度が強いほど,粒子は回転流の外側に近いところに集まった.さらに,照射光強度を時間的に変化することで,回転流の中で粒子がトラップされる位置を時間的に変化することに成功した.数マイクロセカンドで対流の中の粒子の軌道は定常状態に達することがわかった.また,バブルに対するレーザーの照射位置を変化させていくと,発生する対流のモードが大きく変化することがわかった.レーザー照射位置がバブル中心から5マイクロメートル程度の位置より外側では回転流,内側では粒子収束流が発生した.この粒子収束流は,流路底面に対して垂直方向の温度勾配と水平方向の温度勾配がバランスすることでできる,新しいモードの流れであることがわかった.この粒子収束流は特別な流路形状を必要としないマイクロ粒子濃縮・運搬として非常に有用である.また,この粒子収束流は回転流と同様に薄膜近傍に発生するため,流路壁面形状が流れに与える影響を調べるのに有用である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,まずマイクロバブル周辺に発生する回転流の性質をよく理解することを目標としていた.そこでまず,マイクロバブル周辺に照射するレーザー強度と照射位置及びマイクロチャンバーの高さを系統的に変化して,流れの変化を観察した.その結果,レーザーの強度と照射位置によって,上昇流,粒子収束流,および回転流を発生できることがわかった.またそれぞれの流れの中で,トレーサー粒子であるポリスチレン球がどのような位置に集まるかを明らかにした.さらに,マイクロチャンバーの厚みを変化させ,粒子を薄膜近傍で捕捉するために最適なマイクロチャンバー厚さを明らかにした.以上の結果から,トレーサー粒子をマイクロチャンバー内の底面近傍で運動させるための条件を明らかにし,発生する流れの性質を理解するという目標を達成していると言える. さらに,マランゴニ回転流の「圧力勾配」と薄膜近傍の「流速分布」を実験的に見積もるために最適なトレーサー粒子を選定するため,大きさや材質の異なる粒子を使って実験を行った.具体的には粒子直径の異なるポリスチレン球や金属微粒子などを水中に分散させて流れを発生し,粒子の分布や粒子速度を調べた.その結果,粒子を分散させるために加えてある界面活性剤やその他の化学物質がマイクロバブル周辺に発生するマランゴニ対流に大きな影響を及ぼすことがわかった.これらの結果をもとにマイクロチャンバーの底面ナノ構造と流れの関係を調べるために最適なトレーサー粒子を選定し,次年度の研究計画の基盤を築くことができた. 以上の状況から,研究計画は概ね期待通りに進行しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,マランゴニ回転流による薄膜近傍への様々な粒子の捕捉能力を明らかにするために,まずは界面活性剤など水中に含まれる物質が流れにどのような影響を与えるか調べる.具体的には,界面活性剤の種類や濃度を変化させた時に発生する流れがどう変化していくか観察する.またこれに並行して,様々な粒子をなるべく界面活性剤などを含まない純水に分散する方法も考える.具体的には,分散液と粒子を遠心分離した後,純水中に再分散する方法を試みる.得られた結果を基にして,水中にどのように分散させた粒子であれば操作しやすいのかを明らかにする.その上で,それぞれの環境下での薄膜近傍の流速分布や回転流内の圧力分布を見積もる. さらに,マランゴニ回転流に対する流路壁面形状の影響の解明に着手する.回転流によって粒子は薄膜近傍に集められ運動するため,観察される粒子の動きは薄膜近傍の流れを強く反映すると考えられる.そこで,動的斜め蒸着法を利用して薄膜表面にナノコラムを作製する.ナノコラムの間隔,太さ,高さ,形状などを系統的に変化させることで,流れに対する流路壁面形状の影響を調べる.そしてトレーサー粒子が捕捉される領域の変化を評価する.ただし,マランゴニ回転流の発生源となるマイクロバブルの下にナノコラムがあることで,発生する流れが変化してしまう可能性がある.そこで,マイクロバブルを生成する部分にはナノコラムが成長しないようにするなど工夫をする.得られた結果を基にして,粒子の捕捉に最適な構造を明らかにするとともに,ナノ構造が境界層流に与える滑りの効果を明らかにする. 以上の実験及び解析によって得られた結果をまとめ,学会発表を行う.
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Research Products
(5 results)