2015 Fiscal Year Annual Research Report
Functional programming of membrane-bound receptors by On-cell Coordination Chemistry
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15H06318
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
窪田 亮 京都大学, 工学研究科, 助教 (00753146)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 膜タンパク質受容体 / 金属錯体 / 配位結合 / 部位特異的変異導入 / Gタンパク質共役受容体 / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、配位結合が示す高い構造設計性を利用し、リガンド作動性イオンチャネルやGタンパク質共役受容体(GPCR)等の膜受容体を人工的に活性化する手法を開発することである。具体的には、膜受容体に対して、ヒスチジンやグルタミン酸などの金属配位性アミノ酸残基を部位特異的変異導入し、金属イオン・金属錯体との配位結合により、膜受容体の活性化構造の誘起やリガンド結合を強固にする戦略である。本研究では、世界的に見ても活性化手法が不足しているclass A GPCRの生細胞における新規活性化手法を構築することを目的としている。 平成27年度は、GPCRの中でも最大のファミリーを形成するclass A GPCRの人工活性化を目指し、アドレナリン受容体の選択的活性化を試みた。Class A GPCRの一種であるアドレナリン受容体は、主に脳や心臓に局在し、その構造活性相関が詳細に調べられている受容体である。末端に金属錯体を持つアゴニスト(金属錯体-アゴニスト複合体)を、N末端領域にヒスチジン連続配列を部位特異的変異導入により導入した改変アドレナリン受容体に作用させることで、アゴニスト-受容体間相互作用だけでなく、金属錯体-ヒスチジン間の配位結合の多点相互作用により、改変アドレナリン受容体を選択的に活性化する戦略である。実際、モデル細胞であるHEK293T細胞に対して、改変アドレナリン受容体を強制発現させたのち、金属錯体-アゴニスト複合体の活性を評価したところ、Niイオン存在下で親和性が100倍程度上昇することを見出し、本手法の概念実証実験に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、class A GPCRの一種であるアドレナリン受容体の配位アンカー法による人工制御の概念実証実験を行った。 配位アンカー法を実証するためには、アドレナリン受容体のリガンド結合ポケットとHis変異間距離と金属錯体-アゴニスト間距離が一致していることが求められる。またClass A GPCRのN末端領域は今までに結晶構造解析等の構造解析が全く行われておらず、構造デザインが非常に困難であった。そこで本研究では、His変異の位置を変化させた変異アドレナリン受容体ライブラリーと金属錯体-アゴニスト間のリンカー長を変化させた金属錯体-アゴニスト複合体ライブラリーを構築し、生細胞におけるスクリーニング実験から、ヒットペアを見つける方針を打ち立てた。実際、変異型アドレナリン受容体は4種類、金属錯体-アゴニスト複合体を3種類構築・合成したのち、その活性を評価したところ、2つのペアでアドレナリン受容体の活性が上昇することを見出した。さらに発見したヒットペアの詳細を検討したところ、金属錯体-アゴニスト複合体による活性化は、Niイオン存在下でEC50が100倍低濃度シフトすることを示し、配位アンカー法が生細胞上において機能することを実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、概念実証実験に成功した配位アンカー法の一般性の拡張や標的受容体が実際に機能する心筋細胞や神経細胞への適用を目指す。 配位アンカー法は、標的受容体に対してヒスチジンを選択的に導入すると言う非常にシンプルかつ簡便であることから、class A GPCRに限らず、多様な膜受容体に対して適用可能であると期待される。本研究ではclass A GPCRの異なるファミリーであるムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)への適用を目指す。アドレナリン受容体と同様に、N末端領域に対してHis連続配列の導入、mAChR選択的な金属錯体-アゴニスト複合体の合成を行ったのち、配位アンカー法がmAChRに適用可能かを検討する。 さらに、アドレナリン受容体・ムスカリン性アセチルコリン受容体が内在的に発現している心筋細胞や神経細胞において配位アンカー法が通用するのかを実証する。具体的には、モデル細胞と同様に心筋細胞等の初代継代細胞に対して、変異型アドレナリン受容体を強制発現させたのち、金属錯体-アゴニスト複合体により変異型受容体のみを選択的に活性化できるか評価する。活性化出来次第、変異型受容体活性化に伴う生理機能の解明に取り組む方針である。さらにこうした挑戦を行いつつ、配位アンカー法に用いる金属錯体や金属配位性アミノ酸配列の最適化を行うことで、より低濃度の金属錯体-アゴニスト複合体で活性化できるよう改良を行う予定である。
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Research Products
(4 results)