2015 Fiscal Year Annual Research Report
固体酸化物形燃料電池の電極微構造の積極的制御に向けた含浸法の開発と評価
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15H06321
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岸本 将史 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10757636)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 燃料電池 / 熱工学 / 多孔質 / 含浸法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度ではまず,セラミックス粒子による多孔質骨組み構造の最適化から着手した.セラミックス粒子に混合する造孔材の量を変化させることで,骨組み構造中の空隙率を変化させた.集束イオンビームを備えた走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)による解析から,望ましい骨組み構造を作製するための造孔材の量を決定した. 次に,熱分解を用いた含浸法により電極を作製し,電気化学インピーダンス法を用いて電極性能を評価した.ニッケル溶液の導入,熱分解のプロセスを10回から20回程度繰り返すことで,多孔質骨組み構造中に必要な量のニッケルを析出させることができ,SOFC電極として動作する電極を作製することができた.また,従来手法により作製した電極と比べて,優れた性能を有することを確認した.FIB-SEMによる構造解析から,反応サイト密度,酸化物イオン伝導経路,電子伝導経路の3点において,従来電極よりも優れた構造を有していることを確認することができ,優れた電極性能に対する説明を与えた. さらに,電解めっき法を用いた含浸法によっても電極を作製した.めっきの際の溶液濃度や温度条件によって,得られる電極の性能が大きく変化することが判明したため,さまざまな条件で電極を作製することで,適しためっき条件を決定した.作製した電極の電気化学性能評価と微構造解析を行い,従来電極よりも優れた性能を有することを確認した. 加えて,含浸法によって作製した電極の長期耐久性を調べるため,まずは24時間程度の連続運転を行い,作動条件や燃料組成が性能の時間変化におよぼす影響を調べた.その結果,高温,高加湿燃料条件において性能低下が進行しやすいことが明らかになった.ニッケル粒子の凝集による電子伝導経路の形状や電極表面における集電の状態が変化したことが要因であると推察される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度では,含浸電極作製のための基礎となるセラミックス骨組み構造の決定と,3種類の含浸法(熱分解,電解めっき,無電解めっき)によって作製した電極の電気化学性能評価と微構造解析を行うことを計画していた. セラミックス骨組み構造の決定については,セラミックス粒子に混合する造孔材の量を変化させることで骨組み構造中の空隙率を制御し,微構造解析の結果から望ましい骨組み構造を実現するための造孔材の含有量を決定することができた. 熱分解による含浸法については,作製・電極性能評価・微構造解析を行った.従来手法による電極よりも優れた電気化学性能を有することを確認し,その理由を電極微構造の観点から説明することができた. 電解めっきによる含浸法については,作製・電極性能評価・耐久性評価を行った.めっき条件による電極性能のばらつきが当初予想していたよりも大きかったため,適切なめっき条件を決定するために計画以上の時間を要した.また,24時間程度の短期耐久性評価については前倒して実施することができ,電極の作動条件が電極性能の時間変化におよぼす影響が判明しつつある. 無電解めっきによる含浸法については,作製のみ行った.電極性能評価については計画よりも遅れているため,2016年度前期に優先して実施する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度はまず,無電解めっきを用いた含浸法による電極作製,電気化学性能評価,および微構造解析を行う.SOFC電極として使用できる電極を作製するためのめっき条件を決定することがもっとも困難な部分であると予想されるが,前期中に解決することを目指す.また,熱分解および電解めっきを用いた含浸法によって作製した電極の電気化学測定および微構造解析は継続して行う.電極中の反応サイトの分布や化学種の輸送経路などの特徴を調べることで,従来電極に対する含浸電極の優位性をより定量的に示す.また,作製した含浸電極の耐久性を評価するため,100時間程度の耐久試験を行う.電極の作動温度や供給燃料の組成が,電極性能の時間変化にどのような影響をおよぼすかについては特に注目する.また,耐久試験の前後で電極の微構造解析を行うことで,微構造変化の観点から性能変化の原因を明らかにし,性能変化を抑制するための手法について検討する. 従来手法や,本研究で検討する3種類の含浸法によって得られる電極の性能や微構造の特徴をまとめることで,各手法の長所・短所を明確化する.そこから,最適な構造を持つSOFCの電極を作製するための手法を提案する.
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Research Products
(3 results)