2015 Fiscal Year Annual Research Report
消化管内視鏡を用いた生体内蛍光イメージングによる分子標的薬の治療効果予測
Project/Area Number |
15H06333
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬戸山 健 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (80760595)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 消化管内視鏡 / 生体蛍光イメージング / 分子標的薬 / 治療効果予測マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
消化管内視鏡における画像強調観察法を用いた生体内蛍光イメージング法を開発して、消化管腫瘍の増殖因子受容体を内視鏡下に可視化し、分子標的治療薬の治療効果予測マーカーとしての有用性を明らかにすることを目的として、実験を継続中である。 臨床医療に汎用されている内視鏡システムとして、オリンパス社ならびに富士フィルムメディカル社製の内視鏡システムが当研究室では使用可能である。この2つの内視鏡に搭載されているシステムを用いて照射、検出できる波長を利用するため、405nmを励起波長とする蛍光標識物質を選択した。さらに、現在臨床医療にて、主に大腸癌治療における分子標的治療薬である抗上皮増殖因受容体(Epidermal Growth Factor Receptor:以下EGF-R)抗体である、セツキシマブを今回の研究にまず選択し、405nmを励起波長、420nmを蛍光波長として、標識を行った。EGF-R過剰発現細胞であるA431細胞株と標識抗体を反応させ、その検出感度を評価した。96wellプレートに培養したA431細胞株に対し、蛍光標識されたセツキシマブを50μg/mlの濃度で反応させ、plate readerにて、蛍光波長が検出できることを確認し、強度の測定、評価を行った。今後は、胃癌治療における分子標的薬である抗HER2抗体(トラスツズマブ)を、もう一つの抗体薬として使用予定としており、同様の蛍光標識を行い、in vitroでの検出を試みるべく準備中である。 さらに、標識抗体を反応させた細胞株を実際に消化管内視鏡を用いて観察し、蛍光波長がCCDにて検出可能で、視認可能か評価を行うため、400~420nmのレーザーが照射可能な富士フィルムメディカル社製の内視鏡システムの準備を整えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床応用へ向け、必須の条件となる消化管内視鏡システムの技術的な仕組みと有効波長の検討に予期せず時間がかかり、蛍光標識物質の選別に時間がかかった。既存の内視鏡システムで照射可能な波長で、さらにシステム内のCCDにて検出が可能な蛍光波長を合わせて考慮が必要であった。 そのため、抗体への蛍光物質標識実験の開始が遅れ、全体の進行が遅れた。検討の結果、励起波長405nm、蛍光波長420nmの蛍光標識物質で抗体を標識することで、実臨床医療で汎用されている内視鏡システムにて視認可能であると結論を得た。抗体への蛍光標識については、一般に市販されているキットにて問題なく実施可能であり、技術的な問題は発生しなかったため、予想通りの経過で進行することができた。しかし、一方で、検出感度をさらに改善するために、抗体溶媒から不要物質を除去する精製にさらなる行程が必要となっており、全体としては、遅れ気味である。 臨床応用へ向けた内視鏡システムとして、我々が必要とする励起波長が照射可能な富士フィルム社製の内視鏡システムはすでに準備が完了しているため、本研究の要である蛍光標識された抗体薬の安定作成が実現できれば、残りの計画はほぼ予定通り進行できると考えている。現在感度のさらなる改善を行っているセツキシマブで安定作成ができれば、同じ手法を用いて、もう一つの使用抗体であるトラスツズマブへの標識も時間をかけずに行えるため、全体として予定通りに進行が可能と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度中に、目的抗体の一つであるセツキシマブに蛍光標識を行う過程はほぼ終了しており、現在蛍光標識された抗体の検出感度について、in vitroにて検討中である。標的受容体であるEGF-Rを過剰発現した癌細胞株と反応させることにより、標識抗体の検出感度をさらに高めるための標識工程の検討をさらに進める。 セツキシマブで十分な検討を行った後、別の目的抗体である抗HER2抗体、トラスツズマブにおいても同様の手法にて蛍光標識を行い、早期に蛍光標識した2つの抗体の安定作成を目指す。 次に、標的受容体が過剰発現した癌細胞株に標識抗体を反応させ、現在準備している内視鏡システムによる検出を行い、その感度を検討する。in vitroにて十分な視認能が確認できれば、その上で、in vivo実験として、免疫抑制ヌードマウス皮下に作成した標的受容体が発現している癌細胞によるXenograftを用いて、上記検討を行った標識抗体を投与して、生体内での投与量ならびに投与からイメージングまでの至適時間などの条件設定を行う。 また、同時に、Xenograftモデルを用いて、非治療群をコントロールとし、経時的に腫瘍内標的受容体蛍光イメージングを行い、標的受容体発現量の変化を比較検討し、治療効果予測マーカーとしての有用性を評価する。 in vivo実験で十分に検出、検討できれば、ヒト腫瘍内標的受容体に対したヒト臨床試験を予定している。すべての試薬、検査機器はすでに臨床応用がなされているものではあるが、標識抗体については、ヒト使用前に十分な安全確認を行う必要があり、その点には十分に時間をかける必要があると考える。
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