2015 Fiscal Year Annual Research Report
精神障がい者の社会的包摂へ向けた新しい連帯パラダイムの構想―日仏国際比較調査
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15H06354
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
樋口 麻里 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (80755851)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | ケア / 社会学 / フランス / 精神障がい / 社会的排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下を実施した。(ⅰ)安定した住居をもたず、かつ精神障がいを抱える人(精神障がい者とする)への地域生活支援を行うアソシアシオンと、来年度の調査実施について打ち合わせを行い、調査の準備を進めた。(ⅱ)(ⅰ)とは別のアソシアシオンが実施する、トリアローグ(精神障がい者・専門職者・家族間の自由な意見交換)の参与観察を実施した。トリアローグは、精神障がい者が抱える地域生活上の問題に関して三者が自由に意見を述べることで、三者の立場を互いに理解することを目的とした、当事者らによる新たな取り組みである。トリアローグでの調査からは、精神障がい者が医療福祉サービスや日常生活に対する自発的な要望を表明しない状況への対応に関して、専門職らと精神障がい当事者とでは意見の相違があることが示唆された。トリアローグに関する調査は、当初予定していなかったが、精神障がい者の社会的排除の解消に貢献する実践の解明という本研究の範囲に含まれると考えられる。そのため、来年度の調査実施について、当該アソシアシオンに依頼を行い、承諾を得た。(ⅲ)また、フランスで精神障がい者の家族への補足的聞き取り調査を実施するとともに、精神障がい者の社会的排除に対して家族が実践するケアの日仏間の相違に関して、国内の学会および国際研究集会で報告をした。(ⅳ)加えて、フランスの調査協力団体で調査経過についての報告を行い、成果の還元に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランスのフィールドと、調査に向けての準備を着実に進めた。フランスに関する資料や経験的データは、日本からは入手が非常に難しいため、調査の見込みがついたことは研究計画上前進といえる。また、学会報告と並行して論文の執筆も進めており、来年度中には調査結果の一部について学会誌に投稿予定である。以上から、研究は進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、フランスのアソシアシオン(2か所)での調査をそれぞれ進める。次に、精神障がい者の地域生活支援を行う日本のNPO法人に、調査の依頼を行う。こちらは新規のフィールド開拓となるため、調査協力の許可を得るのが難しい可能性がある。その場合は、当該NPO法人が一般に公開している文献資料(主に出版物)を収集し、それを日本データとして使用する。 これらのデータから、日仏間でのケア実践を比較し、その結果を社会学系の学会で報告し、学会誌に論文を投稿する。加えて、日本とフランスの調査協力先で、研究活動の報告を行い、調査結果の還元にも取り組む。
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Research Products
(3 results)