2015 Fiscal Year Annual Research Report
The Preparation of Anisotropic-Pressure-Reactive Mechanochemical Materials
Project/Area Number |
15H06357
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
燒山 佑美 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60636819)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | インダンジオン / X線結晶構造解析 / クリスタルエンジニアリング / メカノクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は一定方向のみの外圧、すなわち異方圧に対し選択的に応答して、発光・変色・伝導特性・強磁性等を示す分子システムの構築を目的とした。平成27年度には以下の成果が得られた。 1. ピリジン、チオフェン、2-メチルチオフェン導入型インダンジオン二量体の合成と性質:既報のインダンジオン誘導体合成手法を参考に、フラビン、もしくはフタル酸誘導体を原料にピリジン、チオフェン誘導体を導入したインダンジオン単量体をそれぞれ合成した。これらは脱プロトン化した後、酸化剤として超原子価ヨウ素を用いたラジカルカップリング反応を鍵反応として二量化することに成功した。また、用いた酸化条件では二種のチオフェン導入体においてチオフェン骨格同士もカップリングしてしまうことが分かった。 上記物質については、すり潰しによる圧力添加によっても望む色変化等は見られなかったが、結晶構造解析よりこれらの分子の固体状態の配列の解明に成功した。特にピリジン導入型インダンジオン二量体については、結晶中で開裂にかかるC-C結合の向きを同一方向にそろえることに成功した。このことは異方圧による開裂反応を誘起する上で非常に重要である。この結晶は溶媒を包接した空孔を形成しており、温度上昇に伴う溶媒の蒸発をTGA/DSC測定により確認することができた。得られたプロファイルに基づき、高温条件でのX線結晶構造解析を行った結果、加熱によって結晶性を保ったまま溶媒が系外へと移るのに対応して空孔をふさぐようにパッキングが変化することも見いだした。 2. ジシリルシクロブタン誘導体の合成:結合開裂部位としてSi-Si結合を有するジシリルシクロブタン誘導体の合成はインダンジオン二量体の合成と同時進行で開始し、全6段階の反応中、第4段階目である2,3-ビス(ジエチルシリル)ナフタレンの合成まで成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘテロ環導入により、反応性が大きく変化することを予想して、初年度は報告例の多いインダンジオン骨格を分子主骨格として限定した。その結果、合成ストラテジーをある程度確立することが出来、これまでに3種類の化合物の合成とそれらの結晶構造解析に成功した。これらについて、狙った物性が発現しないこと、その他の物性測定が多少遅れていることは否めないが、合成ストラテジーを初年度にある程度確立できたことは置換基の変換といった今後の更なる分子設計において非常に重要な結果である。また、ピリジン導入体が分子性の細孔性結晶を形成することは予想外の結果であり、分子認識・吸着材料としての展開も可能となった。ジシリルシクロブテンについても合成完了間近であることから、全体としておおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に合成に成功したヘテロ環導入インダンジオン二量体について、各種分光学的測定や温度可変ESR測定などにより、そのC-C結合開裂能を評価する。これらについては、ガラス・シリコン等の基板上での結晶膜の形成を行い、その配列様式を粉末X線回折等により明らかにしていく。加えて、量子化学計算によるC-C結合開裂エネルギーの置換基効果を見積もることで、適切な置換基の選択を行い、既に確立した合成ストラテジーを用いて新規なインダンジオン二量体の合成を行う。ジシリルシクロブタン誘導体については引き続き合成検討を行う。
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