2015 Fiscal Year Annual Research Report
T細胞受容体の量的制御による抗体産生反応調節機構の解明と自己免疫疾患治療への応用
Project/Area Number |
15H06374
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水井 理之 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30423106)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | T細胞受容体 / 抗体 / 自己免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は前年までに、T細胞受容体数(TCR)が30%程度低下しているCD247遺伝子のヘテロノックアウトマウスにおいて自己免疫を発症させた場合、疾患の進展が軽減することを見出している。さらに、このマウスでは免疫時に胚中心B細胞の形成がコントロールに比し有意に低下していることも見出した。これらの事象を、実際に治療戦略として検討するには、TCR数を調節する方法が必要である。そこで、今回は抗CD3F(ab')2抗体を使用した。Fc部分を欠いた抗体のため、抗体関連の免疫反応を起こすことなくTCRを弱くクロスリンクする。この結合によってTCRが細胞内に取り込まれることで、TCR数が減少する。実際にマウスに抗体を投与し、TCR数をフローサイトメトリーにて抗TCRbeta抗体の蛍光強度で評価し、有意に減少していることを確認した。次にこの抗体をマウスに投与し、NP-CGGにて免疫し、7日後に所属リンパ節を採取、細胞の分布を検討した。その結果、胚中心B細胞の形成は抗CD3抗体投与群で有意に減少していることがわかった(Control vs anti-CD3; 0.48 ± 0.15 vs 0.28 ± 0.13%, p<0.05)。一方、高親和性抗体産生に重要な濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞数には、有意な差は認められなかった。前回、CD247ヘテロノックアウトマウスで同様の実験を行った際に、Tfh細胞数の有意差が認められたものの、胚中心B細胞ほどの差異が認められなかったことを考慮すると、TCR数の減少によって、Tfh分化というよりは、Tfhの機能抑制が引き起こされている可能性が示唆された。今後は、ループスモデルマウスMRL/lprマウスに対して抗CD3抗体を長期投与することによって、自己免疫の病態進展が抑制されるかどうかを検討し、そのメカニズムについても探索していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際の治療への応用を考慮すると、遺伝子改変マウスを使用するよりは抗CD3抗体を投与した際に起こる生体内での反応をより深く探ることが重要であると考え、現在抗体投与の検討を優先的に進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
CD3抗体を自己免疫モデルマウスに投与する検討を今後も進めていく予定である。メカニズムについては現在も検討中であるが、現在までのところ、抗体投与によって制御性T細胞が増加している可能性が出てきており、自己抗体産生抑制以外にも自己免疫疾患抑制のメカニズムが存在している可能性がある。
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