2015 Fiscal Year Annual Research Report
補体C1qを介した化膿レンサ球菌の補体免疫回避機構の解明
Project/Area Number |
15H06380
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 真理子 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 特任研究員 (20754732)
|
Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 化膿レンサ球菌 / 補体 / エンドペプチダーゼ / 古典系路 / C1q |
Outline of Annual Research Achievements |
化膿レンサ球菌は様々な病原因子を発現し,宿主補体免疫系を回避する.肺炎球菌ではendopeptidase O(PepO)が補体C1qと結合し,菌自身のオプソニン化を阻害することが報告されている.一方,化膿レンサ球菌のPepOホモログと補体免疫回避の関連は明らかにされていない.そこで,本研究では化膿レンサ球菌のPepOとC1qの相互作用を解析し,補体系を介した殺菌への影響を検討した. 抗C1q抗体を用いたELISAにより,PepO組換え体(rPepO)がヒトC1qと濃度依存的に結合することを明らかにした.rPepOとC1qの分子間相互作用を表面プラズモン共鳴装置を用いて評価したところ,解離定数(KD)は5.88×10-8 Mであった.古典経路の開始において,C1qの球状ヘッドはIgG Fc領域に表在するリジン残基と静電気的相互作用で結合するため,NaCl濃度の上昇に伴いその結合が減弱することが知られている.一方,rPepOとC1qの結合は,生理条件下より高いNaCl濃度において抑制された.次に,ヒト血清と野生株もしくはpepO欠失株(ΔpepO株)を反応させたところ,血清中におけるΔpepO株の菌数増加率は野生株と比較して低下した.ヒト血清と反応させた野生株およびΔpepO株の表層構造を経時的に電子顕微鏡で観察した結果,ΔpepO株では,野生株と比較して反応後30分より著明な表層構造の破壊が認められた. 以上の結果から,化膿レンサ球菌のPepOはC1qとの会合により補体古典経路を阻害し,後期補体経路における溶菌を回避する可能性が示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
補体C1qを介した化膿レンサ球菌の補体免疫回避メカニズムについて,当初化膿レンサ球菌の菌体表層タンパクであるヒアルロン酸ならびにエンドペプチダーゼOが関連すると予測し,研究を遂行した. 現在化膿エンドペプチダーゼOが補体免疫系におよぼす影響については解析がほぼ終了し,菌体表層に存在するヒアルロン酸についての解析に着手し始めている. 以上より,2カ年計画においてほぼ当初の予定通りのペースで順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
化膿レンサ球菌の因子エンドペプチダーゼO(PepO)と補体C1qの相互作用,ならびにその相互作用が補体免疫回避におよぼす影響については現在論文を執筆中であり,近日中に投稿予定である. 同菌の菌体表層に発現するヒアルロン酸が補体免疫系におよぼす影響に関しては,ヒアルロン酸をコードする遺伝子の欠失株ならびに相補株の作製を完了した.今後,菌体と血清中のC1qとの相互作用についてはenzyme-llinked immunosorbent assay およびWestern blot法を用いて直接的な作用を検討する.さらに,ヒアルロン酸を介した宿主細胞への付着侵入への影響についても解析を行っていく.また,補体系路活性化への影響は,作製した欠失株ならびに相補株を用いた血清中での生存率比較試験を用いて検討する予定である.
|
Research Products
(3 results)