2015 Fiscal Year Annual Research Report
顎顔面骨格形成過程における新規転写因子の役割の解明
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15H06386
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 恵理子 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (00755069)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 転写因子 / 顎顔面骨格形成 / 口蓋裂 / 内軟骨性骨形成 / 口蓋 |
Outline of Annual Research Achievements |
顎顔面領域の骨格形成は、サイトカイン、転写因子など様々な分子によって制御されており、その制御機構が破綻すると、顎顔面骨格形成異常が引き起こされる。近年新たな遺伝子疾患として報告された8q21.11 Microdeletion Syndromeは、顎顔面骨格形成異常を呈し、8q21.11遺伝子座には新規転写因子Zfhx4が含まれる。新規転写因子Zfhx4が顎顔面領域の骨格形成に関与している可能性を想定し、Zfhx4 KOマウスを作製した。Zfhx4 KO マウスは、100%の発症率で口蓋裂を示し、小顎症等の顎顔面骨格異常を呈した。 本研究では、顎顔面形成の制御機構の解析を行うのに相応しい動物モデルであるZfhx4マウスを活用することにより、口蓋形成を中心に顎顔面形成過程におけるZfhx4の役割の解明を目指した。平成27年度に実施した研究成果として具体的には以下のことを明らかにした。 1. in situ hybridizationにより、Zfhx4は口蓋突起に強く発現し、舌および歯胚には発現を認めないことを明らかとした。2.骨格標本の作製・解析により、Zfhx4 KO マウスは、ドーム状の頭蓋、短い鼻、上・下顎骨の低形成、筋突起の欠損、口蓋裂といった顎顔面骨格形成異常を呈することを明らかとした。3.病理組織学的検討により、Zfhx4 KO マウスは口蓋裂を認め、舌や歯胚の明らかな形態異常を認めないことがわかった。 口蓋裂をはじめとする顎顔面骨格形成の先天異常の発症機序の解明は、学術的にも臨床的にも非常に重要な研究課題である。これまで殆ど研究が行われてこなかった転写因子Zfhx4に焦点をあて、口蓋顎顔面の形態形成の包括的な理解に寄与したところに本研究の意義があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Zfhx4 KOマウスおよび野生型マウスを用いて、口蓋形成を中心に顎顔面形成過程におけるZfhx4の関与を解析した。 1. 顎顔面領域における転写因子Zfhx4の発現の検討:E 13.5日齢のマウスの前頭断の組織切片を作成し、in situ hybridizationにより、転写因子Zfhx4の顎顔面領域における発現部位を検索したところ、Zfhx4は口蓋突起に強く発現しており、舌および歯胚には発現を認めなかった。 2. 顎顔面形成におけるZfhx4 KOマウスの解析:生後0日齢のZfhx4 KOマウスおよび同腹の野生型マウスの骨格標本を作成し、アリザリンレッドならびにアルシアンブルーの二重染色を行った。Zfhx4 KOマウスの顎顔面の骨格形成異常を検索したところ、ドーム状の頭蓋、短い鼻、上顎骨の低形成、下顎骨の低形成、筋突起の欠損、口蓋裂を認めた。次に、E 16.5日齢のZfhx4 KOマウスおよび同腹の野生型マウスの顎顔面領域における表現型を病理組織学的に比較検討したところ、Zfhx4 KOマウスでは口蓋裂を認め、舌及び歯胚の明らかな形態異常は認めなかった。口蓋突起の伸長、挙上ならびに癒合の各段階におけるZfhx4の関与を明らかにするために、E13.5、E14.5日齢の組織切片を作製したところ、Zfhx4 KOマウスの口蓋突起は、野生型の口蓋突起と同程度に伸長していることが見出された。 よって、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
Zfhx4 KOマウスの口蓋裂は、口蓋突起の形成不全によるところでないことが明らかとなった。平成28年度は、口蓋突起による口蓋閉鎖の機序について詳細な検討を行い、Zfhx4の口蓋・顎顔面形成における分子メカニズムをin vivoならびにin vitroにて明らかにする。 1.口蓋閉鎖不全に対するZfhx4の関与の検討 時期特異的な口蓋形成のマーカー遺伝子を用いてin situ hybridizationを行い、口蓋形成に関わる遺伝子群の発現に対するZfhx4の関与を検討する。口蓋閉鎖不全の原因が細胞外基質の分泌不足によるか否かを検討するために、Zfhx4 KOマウスと同腹の野生型マウスの組織切片を用いて口蓋突起の細胞外基質である1型コラーゲンおよびヒアルロン酸の免疫組織化学染色を行う。 2.口蓋・顎顔面形成過程におけるZfhx4が構築する分子ネットワークシステムの解析 E14.0日齢のZfhx4 KOマウスおよび同腹の野生型マウスの口蓋突起を採取し、mRNAを抽出後、Microarray解析により各々のマウスの遺伝子プロファイルを作製する。Zfhx4 KOマウスの口蓋突起で著明に発現低下している遺伝子をZfhx4の標的遺伝子候補群とし、その発現部位ならびに発現時期をin situ hybridizationあるいは免疫組織化学染色により解析する。Zfhx4と一致した発現を示した遺伝子をZfhx4標的遺伝子とする。またZfhx4に結合する転写制御因子群を明らかにするために、抗Zfhx4抗体を用いて免疫沈降法を実施後、質量分析により結合タンパク質を同定する。同定された標的分子ならびに転写複合体構成分子の解析は、免疫共沈降法、ルシフェラーゼレポーターアッセイ、クロマチン免疫沈降法、DNA プルダウンアッセイならびに蛍光分子イメージング法等の分子生物学的手法を駆使して行う。
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Research Products
(3 results)