2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H06401
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤山 敬史 神戸大学, 経済経営研究所, 講師 (00756463)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 人員削減 / 利益調整 / 減損会計 / 実証分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトは従業員との契約に際して経営者がどのような利益を報告するのかについて検討することを目的としている。本プロジェクトの研究は個別の会計項目である減損会計に焦点をあてた研究とより総計的な指標である異常会計発生高/保守主義に焦点をあてた研究の2つに大別される。2015年度は、減損会計に焦点をあてた研究を重点的に進めた。当該研究では、規模の大きな減損損失を計上した日本企業を対象に、どのような要因が人員削減の実施および減損損失の計上タイミングに影響を与えるのかについて検証を行っている。会計発生高/保守主義に焦点をあてた研究では、人員削減の前後でどのような特徴をもった会計数値が報告されるのかについて当該研究分野で多く用いられている異常会計発生高と保守主義の指標を用いて分析を進めている。 国内外の先行研究では株主や債権者といった利害関係者に対してどのような会計数値が報告されるのかについて多くの分析が行われてきた。しかしながら、従業員との交渉に際して経営者がどのような会計数値の報告を行うのかについて必ずしも十分な検討が行われていない。近年、日本企業の特徴とされてきた終身雇用の在り方が変化しつつあり、人員削減が増加する中で、人員削減に際してどのような会計数値が報告されるのかについて理解を深めることは、企業と従業員との間の適切な契約に資するものである。 さらに、企業と従業員との関わり合いや契約形態が国家間で異なるため、日本企業を観察することで、これまで先行研究が分析の対象としてきた米国企業を観察することでは観察しにくい事象を捉えることができると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、減損会計に焦点をあてた研究については基礎となる分析を行った。具体的には、減損損失を計上した企業を対象にして、人員削減を行った企業と行っていない企業でどのような特徴の違いがあるのかを分析した。特に、企業内における従業員の影響力の代理変数として従業員持株会持株比率に注目した。さらに、人員削減実施企業について、人員削減の前後のどのタイミングで減損損失を計上するのかについて従業員持株会持株比率に注目して分析した。その結果は神戸大学経済経営研究所のディスカッション・ペーパー(No.DP2016-10)として公表されている。 異常会計発生高/保守主義に焦点をあてた研究については、現在、データ・セットの構築および基礎的な分析を進めている。分析では、人員削減前後に異常会計発生高および会計保守主義の程度がどのような水準になるのかについて分析を行っている。また、基礎的な分析結果について、先行研究における議論を踏まえて、どのように解釈するのかについて議論を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
減損会計に焦点をあてた研究については、多角的な視点から検証結果について検討し、より確かなものとしていきたい。人員削減前後に従業員以外の利害関係者がどのような妥協を行っているのかについても分析し、減損損失の計上タイミングに対してどのような規範的解釈(例えば、分析結果は良い経営者の判断を映し出しているのか、改善されるべき経営者の判断を映し出しているのか)が行われうるのかについて、議論の場を設定し、検討する。さらに、学会等を通じて広く発信していく。 異常会計発生高/保守主義に焦点をあてた研究については、基礎的な分析をさらに進めていき、人員削減に際してどのような会計利益が報告されるのかについて検討していく。さらに、検証結果をどのように解釈するのかについて、規範的な観点から議論の場を設けて検討していきたい。
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Research Products
(1 results)