2015 Fiscal Year Annual Research Report
重イオン衝突におけるパイ中間子生成と高密度非対称核物質の性質
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15H06413
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
池野 なつ美 鳥取大学, 地域学部, 講師 (30756086)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 対称エネルギー / パイ中間子 / 非対称核物質 / 重イオン衝突 |
Outline of Annual Research Achievements |
低中エネルギーでの重イオン衝突によって生成されるπ中間子を通して、非対称核物質の状態方程式(対称エネルギーの密度依存性)とカイラル対称性の部分的回復に関する情報を引き出すことを目的としている。重イオン衝突におけるπ中間子は、核子散乱によって生じるΔ粒子の崩壊を経由して生成されるため、核子-Δ粒子-π中間子の関係を明確にすることが、対称エネルギーを議論する上で第一に重要である。本研究では、核子系の運動を記述する計算として最善と思われる反対称化分子動力学(AMD)法と、反応過程においてΔ粒子やπ中間子などの生成崩壊などを実験データに基づいて記述する微視的輸送模型(JAM)を連動させた新しい輸送模型を構築し、この模型を用いて研究を推進した。 当該年度では、理研RIBFで実験が計画されている核子あたりの入射エネルギーが300MeVでの中性子過剰な132Sn+124Sn衝突について計算を行った。対称エネルギーの密度依存性やクラスター相関は、核子のダイナミクス、特に高密度部分の陽子中性子比に反映されることが確認できる。さらに本研究では、その核子のダイナミクスがΔ粒子とπ中間子にどのように影響するかを定量的に調べた。その結果、Δ粒子の生成比は、高密度・高運動量領域における中性子陽子の比の2乗とよく一致することが明らかになった。また、Δ粒子生成比と中性子陽子比は、π中間子の生成比と直接関係していることも分かってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
核子あたりの入射エネルギーが300 MeVでの中性子過剰な132Sn+124Sn衝突について計算を行い、反応過程における陽子・中性子のダイナミクスとそこから生じるΔ粒子やπ中間子の生成機構が密接に関係していることがわかってきた。特に、Δ粒子の生成比が、高密度・高運動量領域における中性子・陽子の生成比とよく一致することを明らかにした。これらの内容について論文を執筆し投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
入射核・標的核の陽子・中性子数を変えた原子核の衝突や入射エネルギーを変えた場合について系統的に計算し、どの実験条件が対称エネルギーの密度依存性の決定に最適であるかを検討する。
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Research Products
(2 results)