2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H06420
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
兵頭 究 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (80757881)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | ウイルス誘導性免疫不全 / ROSバースト / RBOHタンパク質 / カルシウム依存性タンパク質キナーゼ / 宿主因子 / RCNMV |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では,植物免疫における鍵因子RBOHタンパク質がウイルスによって転用される機構を明らかとすることで,ウイルス誘導性免疫不全の実態に迫ることを目的としている.本目的の達成にあたり,red clover necrotic mosaic virus (以下,RCNMV)をモデルウイルスとして計画を進めた. 平成27年度に行った解析から,RCNMV誘導性RBOH依存的ROSバーストにおいて,ウイルス複製酵素タンパク質p27に加えて,宿主植物由来の因子であるカルシウム依存性タンパク質キナーゼ(以下,CDPK)が必要であることを明らかとした.さらに,CDPKは(1)p27,RBOHの両者とin vivoにおいて相互作用し,3者複合体を形成する,(2)RBOHタンパク質をリン酸化し活性化する性質を持つ,(3)RCNMVの増殖に必要である,ことを示すデータを得た.つまり,RCNMVはCDPKを介してRBOHタンパク質を活性化し,ウイルス増殖のために転用していると考えられた.また,相互作用に関わるドメイン解析から,RBOH, CDPKそれぞれについて,p27との相互作用に必要な領域を絞り込んだ. 興味深いことに, p27はフラジェリンエピトープ(flg22)誘導性のROSバーストを抑制する一方で,flg22誘導性のMAPK活性化には影響を及ぼさなかった.従って,p27による植物免疫抑制において特異的に標的となるシグナル経路の存在が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
p27誘導性のROS産生に必須の新規宿主因子であるCDPKの同定に成功した.CDPKの細胞内局在および生化学的解析から,RCNMVはp27を介してRBOH・CDPKを協働し,宿主植物のROS産生機構を転用することが明らかとなった.また,当初予定していたp27側に存在するRBOHとの相互作用に必須のアミノ酸残基の同定には至っていないものの,RBOH,CDPKのそれぞれについて,p27との相互作用に必要な領域の絞り込みは順調に進んでいる.さらに,flg22誘導性免疫アウトプットのうち,p27による影響を受けるものと受けないものをそれぞれ同定することに成功し,ウイルス誘導性植物免疫不全の全体像の把握に向けて,順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
p27とRBOH間の相互作用に関わるドメイン解析を継続する.また,平成27年度に同定したCDPKを新たに加え,3者間相互作用に必要なドメインの同定を目指す.相互作用に影響のある変異体の免疫応答アウトプット解析を行う.p27によるflg22誘導性植物免疫抑制の全体像を明らかとするために,p27存在時におけるflg22誘導性のカロース蓄積およびMAPK下流に位置する防御応答遺伝子発現を解析する.
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Research Products
(5 results)