2015 Fiscal Year Annual Research Report
層状ケイ酸塩を利用したゼオライト合成における課題解決
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15H06425
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
津野地 直 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40758166)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 層状ケイ酸塩 / ゼオライト / 多孔体 / 触媒 / 吸着材 / 層状化合物 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼオライトは、そのナノレベルの結晶性規則構造に基づいた「吸着能」や「触媒能」の寄与により、我々の生活を身近で支える工業材料である。しかし、その調製および実験へのアプローチは場当たり的なトライアンドエラーおよび経験則に基づいており、合成メカニズムが大変不明瞭であるため、興味深く有益なゼオライトの機能を自在に設計することはまだ困難である。本研究では、現状のゼオライトの機能構築における具体的な問題点を課題として掲げ、申請者が合成に成功した新規層状ケイ酸塩の構造を有効利用し、規則的多孔質材料中の吸着能および触媒能の設計を試みることで、問題解決型の多孔体材料設計手法を提案する。 具体的には、申請者が合成に成功した新規層状ケイ酸塩Hiroshima University Silicate(HUS)を用いゼオライトと類似構造を有する規則的ミクロ多孔体および触媒の設計を試みた。 (1)一般的なゼオライトが無機の四面体ユニット(SiO4やAlO4)のみから成ることに着目し、通常のゼオライトにはない吸着特性の発現を期待して、有機官能基の分布が制御された規則的ミクロ細孔構造の構築を試みた。 (2)ゼオライト骨格内に特異的に存在する、優れた触媒活性種である四配位状態の遷移金属種をの構築を試みた。既存のゼオライト合成における、四配位金属種の含有量(触媒活性に直結する)の限界値(Tiの場合は2 wt%)を突破させることで(目標8 wt%)、より高効率な触媒開発に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)層状ケイ酸塩HUS-2の構造に着目し、有機シラン(ジクロロメチルシラン、トリクロロメチルシラン等)によるシリル化および焼成を含む多段階的な処理によって細孔の構築に成功した。XRD、MAS NMR、ガス吸着などの基礎物性測定に加え、TEMによる結晶性の直接観察、DFT計算による層間分子位置の最適化を行うことで、結晶構造を推定し、HUS-2を前駆体として想定通りに構造転換が進行し、規則的な細孔構造を持つ材料が得られたことが明らかとなった。得られた規則的細孔材料(HUS-10)は高比表面積(400 m2g-1)と均一なミクロ細孔(平均細孔径0.5 nm)を持ちゼオライトに類似した分子ふるい能を発現した。さらに、細孔内の有機置換基の分布を制御することも可能であり、それによって細孔内部の親水性、有機物親和性を調節することが可能となり、結果として優れたCO2吸着材としての性能を発揮できた。 (2)層状ケイ酸塩表面への金属種のグラフティングにより高遷移金属含有量を有する触媒の合成を試みた。層状ケイ酸塩HUS-2の層表面に高い表面密度で存在するSiOH基へチタニウム(IV)アセチルアセトナート(Ti(acac)4)を反応(グラフティング)させることで、高チタン含有量(8 wt%)を有するチタノシリケートの合成に成功した。固定化された活性点がゼオライトに特異的に存在する四配位遷移金属種と酷似しており、高いチタン含有量の寄与により、高効率な触媒反応が進行することも確認済した。さらに、本手法を異なる層状ケイ酸塩へと応用し、触媒の調製条件、用いるチタン錯体の種類を検討した結果、その高い酸化力から安価な点から最も用いられている光触媒であるチタニア(P25)を凌駕する触媒性能を達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)層状ケイ酸塩へのシリル化による規則的構造の構築を目指して、様々な表面構造を持った層状ケイ酸塩を前駆体とし、それらに適切な分子構造を持つシリル化剤を作用させることで多彩な結晶性表面構造の構築を目指す。具体的には当研究室で合成に成功している層状ケイ酸塩のうちテトラメチルアンモニウムおよびベンジルトリメチルアンモニウムを層間に有するHUS-5およびHUS-7に着目し、高次構造の構築を目指す。またシリル化剤中の有機置換基に塩基または酸触媒能力を持つものを選択することで、高活性な固体酸/塩基触媒の開発も試みる。 (2)さらなる触媒活性の向上を目的として、金属種を固定したシリケートシートの剥離によるナノシートの形成を試みる。手法としては、層状ケイ酸塩の層間の拡張、有機溶媒中でのシートの剥離、剥離したシート表面への金属種の固定という多段階的な手法により触媒調製を行う。さらに、メタロシリケート触媒の金属種のスクリーニングを行う。金属を固定した層状ケイ酸塩にさらなる層間修飾が行えることを利用し、層間への有機シリル化、ピラー化または更なる金属修飾を施すことによって、触媒の比表面積、吸着特性および触媒活性点の性質を反応系に対して最適化し、更なる高効率化を目指す。一方で、より効率的な触媒設計への知見備蓄を目的として、X線吸光分光法(XANESおよびXAFS)とDFT計算を組み合わせた、触媒活性種および環境の解明にも努める。
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Research Products
(14 results)