2015 Fiscal Year Annual Research Report
不動由来の痛みに対するリハビリテーションの治療戦略開発に向けた実験研究
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15H06500
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
濱上 陽平 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 客員研究員 (20756374)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 不動 / 痛み / 感覚刺激入力 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は「不活動由来の痛みの発生予防としての関節運動や電気刺激,温熱刺激といった刺激媒体の効果検証」を主目的として掲げ,不活動由来の痛みの発生予防としてのリハビリテーションの治療戦略として,これらの感覚刺激入力は有効か否かを検証した.実験動物には8週齢のWistar系雄性ラット60匹を用い,無処置の対照群(n=16),右側足関節を最大底屈位でギプスで不動化する不活動群(n=22),足関節の不動期間中に患側(右側)の足関節に関節運動を負荷する関節運動群(n=7),電気刺激を負荷する電気群(n=7),温熱刺激を負荷する温熱群(n=8)に振り分けた.刺激方法として,関節運動は小動物用の持続的他動運動装置を用い,足関節底背屈運動を行った.電気刺激は伊藤超短波製の経皮的電気刺激装置を用い,右側腓腹筋に対して刺激周波数1Hz,刺激強度4mAの条件で電気刺激し,筋収縮を誘発させた.温熱刺激はOG技研製の赤外線加熱装置を用い,下肢全体に負荷した.なお,それぞれの実施時間は30分間,頻度は週5回,実験期間は4週間とした.実験期間中は1週毎にvon Frey filamentを用いた不動側足底部の痛覚閾値の評価を行った.その結果,不活動群では不動を開始して2週目から痛覚閾値の低下が認められ,それは不動期間に準拠して顕著となった.一方,関節運動群と電気群は,不動2週目から痛覚閾値の低下が認められたものの,不動4週目においては不活動群に比べ痛覚閾値の低下が軽減していた.しかし,温熱群は実験期間を通じて不活動群の痛覚閾値と有意差を認めなかった.これらの結果から,臨床で用いられていることの多い関節運動や電気刺激により不活動由来の痛みの発生予防効果を発揮する可能性が示唆された.つまり,これらの刺激媒体を用いた感覚刺激入力は不活動由来の痛みに対するリハビリテーションの治療戦略に活用できると推察される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は「不活動由来の痛みの発生予防としての関節運動や電気刺激,温熱刺激といった刺激媒体の効果検証」を主目的として研究を進めてきた.その結果,関節運動や電気刺激を負荷することによりに不活動由来の痛みが軽減することが明らかとなった.つまり,これらの成果から本年度の研究目的は概ね達成されていると考えられ,本研究課題は当初の計画通りに進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果から,臨床で頻繁に用いられている関節運動や電気刺激は不活動由来の痛みに対し,発生予防効果を発揮することが明らかになった.来年度はこれをさらに発展させ,不活動部位以外の運動によって疼痛抑制効果が発揮されるかを明らかにする.具体的には,ラットの一側足関節をギプスで不動化する不活動モデルを用いて,上肢のみの運動によって運動誘発性疼痛抑制効果(exercise-induced hypoalgesia:EIH)が発現するか否かを行動学的解析によって確かめ,さらにそのメカニズムを探るため,中脳の生化学・免疫組織化学的解析を行う予定である.そして,本年度と次年度の研究成果を総括し,不動由来の痛みに対する効果的なリハビリテーションの治療戦略に関して提言を行いたいと考えている.
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Research Products
(5 results)