2015 Fiscal Year Annual Research Report
Helicobacter pylori VacAの肺内同定とその呼吸器への作用
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15H06502
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中島 章太 長崎大学, 病院(医学系), 医員 (20755730)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | H.pylori / VacA / 肺 / 気管支肺胞洗浄液 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)VacAの肺内同定 a)当科で保存している間質性肺炎患者の肺組織を用いて、抗VacA抗体による免疫染色を施行した。77例のうち10例で陽性所見を得た。陽性例は膠原病関連間質性肺炎に多かった。VacA陽性群とVacA陰性群の比較では、年齢や性別に有意差はなかったが、VacA陽性群のほうが予後が良い傾向にあった(有意差なし)。b)当科で保存している気管支肺胞洗浄液を用いて、抗VacA抗体カラムを通し蛋白質の精製を行い、ウエスタンブロットやMS/MSイオンサーチにより、その蛋白質の解析・同定を試みた。MS/MSイオンサーチにより気管支肺胞洗浄液中にVacAに同定したが、塩基配列が陽性コントロールとして使用した精製VacA蛋白と完全に同一であったため、コンタミネーションと結論付けた。気管支肺胞洗浄液中のVacA濃度は非常に低値であり、同定は困難であった。c)当科で保存している血清を用いて、抗H. pylori抗体を測定した。特発性肺線維症ではその陽性率や年齢、性別、その他の検査所見、画像所見、治療反応性、予後等との統計学的に有意な関連は認められなかった。 2)VacAの呼吸器に対する作用 a)VacAは正常ヒト気管支上皮細胞を空胞化させ、濃度依存性かつ刺激時間依存性にIL-8の産生を亢進させた。b) VacAでA549細胞を刺激し、Luminex装置を用いてIL-8以外のサイトカインについても測定したところ、IL-6についても上昇を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VacAの肺内同定ではMS/MSイオンサーチによる気管支肺胞洗浄液内のVacA同定を試みたが、蛋白同定は困難であった。しかしながら、VacAの呼吸器に対する作用に関する検討では、VacAがA549細胞だけでなく、正常ヒト気管支上皮細胞を空胞化させ、濃度依存性かつ刺激時間依存性にIL-8の産生を亢進させることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1)VacAの肺内同定 間質性肺疾患だけでなく、肺癌やびまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、サルコイドーシスなどその他の呼吸器疾患の肺組織でも抗VacA抗体による免疫染色を行い、その疾患毎の陽性率や染色態度を検討する。また、臨床像との統計学的な解析を行い、VacAが関連する疾患病態を明らかにする。 2)VacAの呼吸器に対する作用 VacAをマウスの気管内に投与し、マウスの体重変化や予後の観察に加え、気管・気管支や肺に起こる生化学的・病理学的変化を明らかにする。用いるマウスは過去にVacAを胃内に投与し胃潰瘍を発症させた報告(Fujikawa A et al. Nat Genet 2003, Telford JL et al. J Exp Med 1994)を参考に、VacAに対する感受性を有するBALB/cマウス、C57BL/6マウスを用いる。当初は上記報告に準じた十分量のVacAを気管内へ単回投与し、ホモジネート肺を用いてIL-8やその他のサイトカインを測定し、肺組織の病理所見を明らかにする。その後、少量のVacAを気管内に持続投与する系でも同様の実験を行い、VacAが肺へ関与する病態を明らかにする。また、ステロイド薬や抗線維化薬、抗炎症作用を有するマクロライド系抗菌薬、VacAによる空胞化形成のブロッカーであるbafilomycin A1、NPPB等を事前に服用する群とVacA投与後に服用する群、服用しないコントロール群にわけ、群間でのサイトカイン産生、肺病理所見等を比較し、予防・治療法を開発する。
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