2015 Fiscal Year Annual Research Report
組織恒常性維持応答機構におけるアンジオポエチン様因子2の機能解明
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15H06508
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
堀口 晴紀 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 特定事業研究員 (70755454)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / アンジオポエチン様因子2 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンジオポエチン様因子 2(ANGPTL2)は、組織リモデリングによる損傷修復を促進し、組織における微小環境の恒常性維持に寄与する因子である。本研究では、大腸における ANGPTL2 の発現と組織恒常性維持機構・再生機構の役割を明らかにし、炎症性大腸疾患の治療法開発の基盤研究を行う。 申請者は準備的研究として、ANGPTL2 KO マウスでは野生型マウスと比較してデキストラン硫酸ナトリウム (DSS)による潰瘍性大腸炎モデルにおいて重症化し、生存率が低いことを見出していた。加えて、本研究では、腸管の組織修復機構における ANGPTL2 の役割を明らかにするために、野生型マウス、ANGPTL2 knockout (KO)マウスのDSS潰瘍性大腸炎モデルを作成し、体重減少、下痢、腸管出血、腸の短縮などの炎症病態および組織学的解析を行い、ANGPTL2 KOマウスにおいて再生機能が低下していることを見出した。 また、野生型マウスの大腸サンプルを用いて、in situ hybridization、免疫染色、定量PCRによるANGPTL2 の発現、局在の確認を行った。ANGPTL2は大腸組織において、上皮細胞には発現しておらず、幹細胞ニッチ細胞である筋線維芽細胞に主に発現していることを見出した。 さらに、in vitro の実験系においては、マウス腸管上皮細胞オルガノイド培養システムを用いて解析を行っている。 ANGPTL2による組織修復メカニズム解析については現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
大部分の解析において、予定以上に進行しており、手技的に困難な部分も早い段階で認識することで対応できた。したがって、総合的に当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス腸管上皮細胞オルガノイド培養システムおよびANGPTL2による組織修復メカニズム解析については引き続き行っていく予定である。その際、腸管上皮の単離、さらに筋線維芽細胞のプライマリー培養が必要不可欠であるが、すでに準備実験においてそのシステムは構築済である。 ANGPTL2をターゲットとした新規腸疾患治療法開発の基盤研究として、ANGPTL2リコンビナントタンパクの経腸投与あるいはANGPTL2発現腸上皮オルガノイド移植などを予定しており、現在治療モデルの準備を行っている。 以上より、本研究により腸管の恒常性維持機構における ANGPTL2 の機能解明は、その破綻に起因するさまざまな腸管疾患の新たな治療法や予防法の開発にもつながることが期待される。
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