2015 Fiscal Year Annual Research Report
TRAF6シグナルが制御する樹状細胞のデングウイルス感染に対する防御機構の解明
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15H06512
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
神山 長慶 大分大学, 医学部, 助教 (50756830)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | TRAF6 / 樹状細胞 / チクングニアウイルス / アルボウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、蚊によって媒介されるアルボウイルス感染時の生体防御反応において、シグナル伝達分子TRAF6によって分化・機能が制御される樹状細胞サブセットの役割を樹状細胞特異的TRAF6欠損マウスを用いて生体レベルで明らかにすることを目的とする。今年度は感染初期に樹状細胞に感染することが知られているチクングニアウイルスを用いた感染実験を実施し、その免疫応答の解析を試みた。 樹状細胞特異的TRAF6欠損マウスにチクングニアウイルス感染実験を実施し、経時的な血清中ウイルスRNAの検出をRT-PCR法を用いて実施した。野生型マウスの血清中では感染後全く検出されない力価のウイルスを投与した場合に、樹状細胞特異的TRAF6欠損マウスではウイルスRNAが感染後2,3日目に血清中より検出された。 さらに、当研究室にはTRAF6に結合することでToll様受容体、RIG-I様受容体のシグナルを負に制御する遺伝子FLN29の欠損マウスが樹立されている(J Bio Chem. 2008)。このマウスの線維芽細胞は水泡性口内炎ウイルス感染に対する抵抗性が亢進する。FLN29欠損マウスにも同様にチクングニアウイルスの感染実験を実施し、血清中のウイルスRNAの検出を行ったところ、FLN29欠損マウスは野生型マウスに比べてウイルスの排除能がより高いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度には、WHOの実験室生物安全指針に則り、チクングニアウイルス感染実験を大分大学医学部動物実験部門バイオセーフティレベル3の実験施設にて実施した。具体的にはウイルス液をマウスの左右後肢に皮下投与することで感染させ、経時的に血清を回収した。血清サンプルに対するRT-PCR法にてチクングニアウイルスRNAの存在を確認したところ、樹状細胞特異的TRAF6欠損マウスは野生型マウスに比べて血清中ウイルスRNAの排除能が低いことが判明した。また、FLN29欠損マウスは野生型マウスよりも血清中ウイルスRNAの排除能が高いことが明らかになった。 上記マウス3群間でのチクングニアウイルス感染時におけるウイルス排除機能の解析結果より、樹状細胞におけるTRAF6の欠損がチクングニアウイルス感受性亢進に寄与し、全身におけるFLN29の欠損がウイルス抵抗性獲得に寄与することを生体レベルで確認することができた。 以上の理由より、現在までの研究進捗状況はおおむね順調であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験でチクングニアウイルスに対する抵抗性にTRAF6/FLN29が重要であることが示されたが、これら分子がウイルス感染時に樹状細胞の機能を制御しているか明らかではない。そこで、平成28年度は、まず以下の2項目を実施する。①野生型マウス、樹状細胞特異的TRAF6欠損マウス、FLN29欠損マウスの樹状細胞にチクングニアウイルスを感染させ、感染時に樹状細胞で誘導されるIFNβ、細胞中のウイルスRNA量をreal-time PCR法で解析し、上記マウス3群間のチクングニアウイルス排除能の差がⅠ型インターフェロンの誘導能によるものか確認する。②上記マウス3群のチクングニアウイルス感染樹状細胞をレシピエントマウスの足蹠部より刺入した後、膝窩リンパ節におけるウイルスRNA量を解析し、TRAF6/FLN29がウイルス感染樹状細胞の所属リンパ節への走化性に与える影響を検証する。さらに、膝窩リンパ節内のT細胞活性化を解析することで、TRAF6/FLN29がウイルス感染樹状細胞のT細胞活性化能を制御するか明らかにする。 次に、樹状細胞特異的TRAF6欠損マウスの樹状細胞で野生型マウスに比べて減少、または増加している樹状細胞サブセット毎にチクングニアウイルスを感染させ、どの樹状細胞サブセットがチクングニアウイルス感染時の生体防御に重要な役割を果たしているかを明らかにする。 さらに、野生型マウスの該当樹状細胞サブセットを変異マウスへ移入する。移入後にウイルス感染を行うことにより、表現型が野生型のものに戻るかを観察する。この解析により、チクングニアウイルス感染防御に重要な役割を持つ樹状細胞サブセットを同定する。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Lypd8 promotes the segregation of flagellated microbiota and colonic epithelia.2016
Author(s)
Ryu Okumura, Tkashi Kurakawa, Takashi Nakano, Hisako Kayama, Makoto Kinoshita, Daisuke Motooka, Kazuyoshi Gotoh, Taishi Kimura, Naganori Kamiyama, Takashi Kusu, Yoshiyasu Ueda 他9名, Masahiro Yamamoto, Eiji Umemoto, Koichi Sano, Kiyoshi Takeda
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Journal Title
Nature
Volume: 532
Pages: 117-121
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Susceptibility of Aedes flavopictus miyarai and Aedes galloisi mosquito species in Japan to dengue type 2 virus.2015
Author(s)
Raweewan Srisawat, Thipruethai Phanitchat, Narumon Komalamisra, Naoki Tamori, Lucky Runtuwene, Kaori Noguchi, Kyoko Hayashida, Shinya Hidano, Naganori Kamiyama, Ikuo Takashima, Tomohiko Takasaki, Ichiro Kurane, Narihiro Narita, Takashi Kobayashi, Yuki Eshita
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Journal Title
Asian Pacific Journal of Tropical Biomedicine
Volume: 9
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 九州産サバの水揚げ地別寄生アニサキス種の解析ならびに劇症型アニサキス症を発症するアニサキス種の同定2016
Author(s)
飛彈野真也, 白神浩平, 伊藤秀幸, 野口香緒里, 野口香緒里, 水上一弘, 村上和成, 八尋隆明, 西園晃, 神山長慶, 林田京子, 小林隆志
Organizer
第85回日本寄生虫学会
Place of Presentation
宮崎市民プラザ(宮崎県宮崎市)
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-20
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[Presentation] タイ国のデング熱について2016
Author(s)
江下優樹, Raweewan Srisawat, Siriluck Attrapadung, Narumon Komalamisra, 成田弘成, Chayada Khamsawad , 山中敦史, 小西英二, 塩田達雄, 飛彈野真也, 神山長慶, 小林隆志, 倉根一郎, 高崎智彦
Organizer
第37回都市有害生物管理学会大会
Place of Presentation
慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール(東京都港区)
Year and Date
2016-02-06
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[Presentation] 腸管免疫におけるSLPIの役割の検討2015
Author(s)
園田光, 尾崎貴士, 玄同淑子, 野口香緒里, 林田京子, 江下優樹, 神山長慶, 飛彈野真也, 小林隆志
Organizer
第6回癌・炎症と抗酸化研究会
Place of Presentation
ホルトホール大分(大分県大分市)
Year and Date
2015-11-13 – 2015-11-14
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[Presentation] 九州産サバの水揚げ地別のアニサキス寄生率、筋肉移行率および寄生アニサキス種の解析2015
Author(s)
白神浩平, 飛彈野真也, 中村匠子, 野口香緒里, 水上一弘, 村上和成, 八尋隆明, 西園晃, 神山長慶, 林田京子, 小林隆志
Organizer
第68回日本寄生虫学会南日本支部大会・第65回日本衛生動物学会南日本支部大会 合同大会
Place of Presentation
長崎大学医学部坂本キャンパスポンペ会館(長崎県長崎市)
Year and Date
2015-10-17 – 2015-10-18
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[Presentation] Aedes (Stegomyia) scutellaris グループ蚊のチクングニアウイルスに対する感受性・媒介能の比較2015
Author(s)
相馬颯介, 林田京子, 飛彈野真也, 神山長慶, 黒川昌悟, 野口香緒里, 福田昌子, Narumon Komalamisra, 牛島廣治, 倉根一郎, 高崎智彦, 小林隆志, 江下優樹
Organizer
第68回日本寄生虫学会南日本支部大会・第65回日本衛生動物学会南日本支部大会 合同大会
Place of Presentation
長崎大学医学部坂本キャンパスポンペ会館(長崎県長崎市)
Year and Date
2015-10-17 – 2015-10-18
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