Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究実績は以下の通りである. Aghion, Bloom, Blundell, Griffith, and Howitt (2005, Quarterly Journal of Economics)の部分均衡モデルをプラットフォームとして, step-by-step型のR&D競争を伴う内生的経済成長モデルを構築した. 具体的には, 以下のような競争環境をモデルで想定した: 経済の各産業において, 最新技術を持つ企業のみが, 更なる技術開発のための(quality-improving)R&D投資を実行できる. 新規参入企業は, 最新技術水準に追いつくために, (catch-up)R&D投資を行う. 新規参入企業が最新技術水準に追いついた場合, 既存企業と新規参入企業との間で最新技術を開発するR&D競争が起きる. このモデルに基づき, 定常均衡(均斉成長経路)だけでなく移行経路上に関する分析を含めて, 財政政策の政策効果を考察した[Morimoto and Takao, 未公刊]. 以下の2点の主要結果を得た: ① 定常均衡において, 法人税減税は経済成長率を上昇させることを示した. 一方, quality-imoroving R&D投資およびcatch-up R&D投資への補助金率の増加がもたらす経済成長率への影響は, (内生的に決定される)経済の市場構造に依存することを示した. ② 定常均衡は, 鞍点(saddle point)ないし沈点(sink)となることを解析的に示した. また, 広いパラメーター領域において, 定常均衡が沈点となり, 均衡経路は減衰振動(damped oscillation)を伴って定常均衡に収束することを示した. すなわち, 上記の結果は, 各財政政策が長期的には経済成長率に正の影響を持つとしても, 経済循環を引き起こし, かつ短期的には経済成長率に負の影響を持ちうることを示唆する.
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