2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H06569
|
Research Institution | Bunkyo Gakuin University |
Principal Investigator |
竹島 康博 文京学院大学, 人間学部, 助手 (50755387)
|
Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 情動 / 注意 / RSVP課題 / 視覚探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,実験環境の整備および本研究課題において検討を進めていく視聴覚統合における情動情報の影響に関連した予備的検討を行った。 視聴覚統合について検討していく上では,まず単一感覚における感覚情報処理について十分に明らかとなっている必要がある。そこで,予備的検討の一環として画像刺激から喚起される情動の強さが感覚処理に与える影響について実験的に調べた。事前に各実験参加者に怒り顔の画像刺激から喚起される情動価の強度を評定してもらい,各個人にとって情動価の高い刺激と低い刺激を選定した。それらの刺激を,統制条件となる同一人物の無表情顔と合わせて実験刺激として提示した。実験の指標としては,高速提示される視覚刺激系列の中からターゲットを検出する課題の検出成績,および視覚探索課題における探索時間を使用した。検出成績においては,従来の研究同様に無表情顔よりも怒り顔の方が課題の成績が高くなっていたものの,怒り顔どうしでは情動価による課題成績の違いは見られなかった。一方,探索時間においては,情動価の高い怒り顔刺激の探索時間が情動価の低い刺激や無表情刺激と比較して短くなっていた。対して,情動価の低い怒り顔刺激と無表情刺激の探索時間には違いが見られなかった。したがって,表情刺激から喚起される情動価の強さは,ターゲットの検出の精度には影響を与えないものの検出する速度に対して影響を与えており,情動価が十分に高くないと素早い検出が行われないことが明らかとなった。この結果は,喚起される情動価の強さは多数の対象から自分に対する脅威を素早く発見する機構には関連していることを示唆している。 合わせて,表情刺激に内包される情動情報がダブルフラッシュ錯覚と呼ばれる視聴覚統合によって生じる錯覚現象への影響についても検討を行った。しかし,情動情報がダブルフラッシュ錯覚に関連していることを示す結果は得られなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度から所属研究機関に新しく着任したが,そこでの科学研究費による物品購入の事務手続きのルールを把握するのに手間取り,思ったように実験環境整備のための実験機器を揃えることができなかった。しかし,何とか当該年度中に実験及び解析用のPC,視覚刺激提示用のCRTディスプレイ,聴覚刺激提示用のインターフェースとヘッドホン,実験全体を制御するためのソフトウェアの一式を揃えることができた。 また,実験機器を揃えるのに手間取ったために,当該年度に予定していた予備的検討も計画通りには実施できなかった。また,計画通りに実施した表情刺激から喚起される情動情報とダブルフラッシュ錯覚との間に関連を見出すこともできなかった。しかし,計画を一部変更して実施した喚起される情動の強度と視覚処理との関連の検討においては,高速提示される視覚刺激系列内のターゲット検出には影響を与えない一方で,視覚探索には寄与しているという興味深い実験結果を得ることができた。この研究成果は,次年度の研究を進めていく上で必要な知見となると考えられる。 上記の理由から,研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は,今年度実施することのできなかった,視聴覚統合における情動情報の感覚間の共有の有無についての検討を行っていく。一方の感覚刺激に含まれる情動情報が他方の感覚刺激の知覚に影響を与えているかを検討することは,本研究課題の目的を達成する上でも重要な知見になると考えられる。 また,視聴覚情報の統合過程の中で,情動情報が促進的もしくは抑制的に処理されているのかについても検討を試みたいと考えている。情動刺激はその情動のカテゴリー(怒りや恐れ)によって,感覚処理に異なる影響を与えることが明らかとなっている。この情動カテゴリーによる影響の差異が視聴覚統合の中で増大あるいは減少するのであれば,どのような処理過程を経ているのかを推定する手がかりになると考えられる。 本年度得られた研究成果,および来年度の研究成果については,ある程度まとまり次第随時学会発表および論文投稿を行っていく。
|
Research Products
(2 results)