2015 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体ストレス誘導剤クラハインの活性発現メカニズムの解明
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15H06584
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岩崎 有紘 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (00754897)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | クラハイン / 生物活性物質 / 天然物化学 / シアノバクテリア |
Outline of Annual Research Achievements |
クラハインは、研究代表者らが Lyngbya 属海洋シアノバクテリアより単離、構造決定した新規鎖状リポペプチドであり、両端にアセチレンとケトンをもつ独自性の高い構造を有する。その生物活性として、小胞体膜上のカルシウムイオンポンプ(SERCA)を阻害してアポトーシスを誘導すること、また破骨細胞の分化阻害活性を有することを明らかとしてきた。これら SERCA 阻害活性や破骨細胞分化阻害活性の作用機序などを明らかにし、クラハイン型化合物の医薬リードとしての有用性を明らかにすることを目指して以下の研究を行った。 クラハインに関連する構造を有する新規化合物2種(クラハインBおよびジャハナイン)を海洋シアノバクテリアより見出した。クラハインBはクラハインのNor体であり、ヒトがん細胞に対し、クラハインと同等の増殖阻害活性を示した。さらに本化合物の全合成を達成し、構造の確認と大量供給ルートの構築に成功した。クラハイン型化合物は希少な海洋天然物であり、充分な量のサンプルを海洋シアノバクテリアから得る事は困難である。本全合成の達成は、クラハイン型化合物の作用機序解明研究を進めるにあたって大きな進歩となった。 ジャハナインは、クラハインよりも長いペプチド鎖を有する鎖状リポペプチドで、両端に末端アセチレンとケトン側鎖を有する点が共通する。本化合物は、クラハインよりも強い細胞増殖阻害活性を示すことから、より強力な SERCA 阻害剤として期待される。現在、構造活性相関の解明に向けた全合成研究が行われている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クラハイン型の化合物として、クラハインBおよびジャハナインを発見したことは、構造活性相関の解明という点において大きな進歩となった。特に、より強力な活性を示すジャハナインに関しては、今後の全合成研究の進捗に合わせて構造活性相関の解明が期待される。また、クラハインBに関しても全合成が達成されたことは、化合物の量的供給という点で大きな進捗となった。 一方で、クラハインと SERCA との結合部位の解明については、未解明の部分が多く残っており、今後力を入れていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
クラハイン型化合物(クラハイン、クラハインB、ジャハナイン)を用いて SERCA 阻害活性と破骨細胞分化阻害活性の関連性を明らかにする。具体的には、破骨細胞前駆細胞に対してクラハイン型化合物を処理し、細胞質内のカルシウムイオン濃度変動解析などを通じて作用点を解明する。 ジャハナインについては、全合成の達成による構造の確認と、合成中間体の生物活性試験を通じた構造活性相関の解明を行う。
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Research Products
(9 results)