2015 Fiscal Year Annual Research Report
急性肺傷害におけるロイコトリエンB4第二受容体BLT2の肺保護作用
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15H06604
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
重松 美沙子 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助手 (60760303)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 急性肺傷害 / 脂質受容体 / ロイコトリエン / ニューモライシン |
Outline of Annual Research Achievements |
ロイコトリエンB4(LTB4)第二受容体(BLT2)を欠損させたマウスでは、肺炎球菌毒素であるニューモライシン(PLY)を気管内投与した際、野生型マウスと比較して顕著に高い致死率および肺の血管透過性亢進、気管支収縮を呈することが認められたため、以下の内容について解析を行った。 マウスの肺においては、肺胞上皮2型細胞および血管内皮細胞でBLT2の発現が認められた。野生型マウスとBLT2欠損マウスの定常状態における比較では、肺の構造に明らかな変化は認められず、肺サーファクタント産生、ムチン、接着因子、増殖・分化に関わる細胞内シグナル分子の発現にも差を認めなかった。一方、PLY投与後の肺では、野生型と比較してBLT2欠損マウスでより重篤な肺傷害を生じ、気道抵抗および弾性抵抗はBLT2欠損マウスでのみ上昇を示した。また、BLT2のリガンドである12-HHTの産生をNSAIDs投与により阻害したところ、野生型マウスでもPLY投与による致死率が上昇し、12-HHT/BLT2シグナルがPLY誘導性急性肺傷害に対し保護的役割を示すと考えられた。 PLY投与後の野生型およびBLT2欠損マウスの肺組織および肺胞洗浄液を、質量分析計を用いたエイコサノイド一斉定量法により解析したところ、大量のシステイニルロイコトリエン類(cysLTs)の産生が認められた。cysLTsはシステイニルロイコトリエン受容体CysLT1を活性化することにより肺において気管支収縮および血管透過性亢進をきたすことが知られており、PLY投与後のBLT2欠損マウス肺で野生型マウスと比較して重度の血管透過性亢進および気管支収縮が認められる機序の一端として、CysLT1シグナルを増強する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス肺の肺胞上皮2型細胞においてBLT2の発現が認められたため、当初は、定常状態における肺胞構造や、サーファクタントやムチンの組成および産生量など、肺胞上皮の物理的バリア形成がBLT2欠損により不十分となっている可能性を第一に想定したが、構造の観察やサーファクタントタンパク質およびサーファクタント脂質、ムチンの解析結果からは野生型と比較して明らかな変化を認めなかった。一方で、BLT2は血管内皮にも発現が認められた上、過去の報告および本研究の予備検討においてPLY投与による血管透過性亢進も認めた。さらに気管支収縮と併せて、BLT2欠損マウスにおいてPLY投与後の肺で生じる変化が気管支喘息の病態で生じる変化に類似していることに着目し、さらなる解析を行った結果、PLY投与後の肺で大量のシステイニルロイコトリエン類が産生されていることが明らかとなった。 PLY投与後にBLT2欠損マウスで顕著な血管透過性の亢進と気道抵抗の上昇を生じ、結果として高い致死率を呈する機序の一端を示唆しており、全体として概ね順調に進行していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
PLY投与後のマウス肺において大量のシステイニルロイコトリエン類cysLTsの産生が認められたが、その産生量には野生型マウスとBLT2欠損マウス間で差を認めなかった。野生型マウスと比較して、BLT2欠損マウスで顕著な血管透過性亢進、気道抵抗の上昇、および高い致死率を示す機序を解明するため、cysLTsの産生細胞であると推察されるマスト細胞や、システイニルロイコトリエン受容体CysLT1についてさらなる解析を行う必要がある。 野生型とBLT2欠損マウスでマスト細胞の性質や数、局在に変化があるかどうかを確認する。マスト細胞の実験については、協力者の了解を得ている。 CysLT1は過去の報告で、他のGタンパク質共役型受容体GPCRであるCysLT2やGPR17との相互作用が示されており、同じくGPCRであるBLT2とも相互に関連している可能性はあると考える。血管内皮細胞を用いて、BLT2とCysLT1が共発現しているか確認し、BLT2リガンドである12-HHT存在・非存在下、あるいはBLT2アンタゴニスト存在条件下でLTD4投与を行い、CysLT1のシグナルについて解析を行う。
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Research Products
(2 results)