2015 Fiscal Year Annual Research Report
計算・情報科学的アプローチを基盤とした合理的抗体設計
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15H06606
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
黒田 大祐 昭和大学, 薬学部, 助教 (60756732)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 生命情報科学 / 計算化学 / 蛋白質工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンピュータを用いた蛋白質の分子設計に取り組んでいる。初年度はコンピュータを用いた抗体設計及び構造解析が中心となった。これまでに主に以下に示す3つの結果を得ている。 1. 構造が既知の抗体-抗原複合体をもとに、最適な設計条件の検討を行った。抗体のCDR-H3のみだけでなく、周囲の他のCDRも同時に改変することで、より安定なアミノ酸配列を得ることができることを明らかにした。 2. 設計している抗体の標的(抗原)となるMCP1蛋白質の発現・精製を行った。 3. 抗体-抗原複合体及びその他の蛋白質-蛋白質複合体の相互作用面の比較を行った。自然界の抗体-抗原複合体の形の相補性や水素結合能について網羅的に調べ、今後の分子設計時の指標となるテータベースを構築した。 4. 蛋白質の主鎖の柔軟性の取り込みは、計算生物学における長年の課題となっている。そこで、どの程度の柔軟性を考慮すれば(コンピュータ内で)安定な蛋白質を設計できるかをモンテカルロシミュレーションを用いて調べた。その結果、RMSD値で0.6A程度の小さな揺らぎが複合体形成に重要であるという結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コンピュータでの分子設計時に、蛋白質の主鎖を固定し、抗体の立体構造の抗原結合前の始状態と結合後の終状態のみを考慮していたため、シミュレーションで安定性を評価する際に、それらの始状態と終状態とを繋ぐような構造変化を観察することができなかった。そのため、実験での検証にまで進むことができなかった。一方で、上述したように、コンピュータを用いた解析は比較的順調に進んでおり、既にいくつかの研究成果を報告している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は蛋白質の主鎖の柔軟性を考慮した分子設計を行う。また、分子動力学計算を用いて、構造変化も考慮した設計に取り組む。さらに、設計した抗体の発現・精製に取り組み、その抗原結合能や安定性をITCやDSC等を用いて確認する。ターゲットとなる抗原としては、当初の予定通り、モデル抗原として、リゾチームとMCP1を用いる。さらに、ウイルス蛋白質を抗原として用いた抗体-抗原複合体のシミュレーションや、抗体と同様に獲得免疫系に関わるHLA蛋白質に関するコンピュータを用いた設計にも取り組む。
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Research Products
(4 results)