2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H06611
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
時田 郁子 成城大学, 文芸学部, 専任講師 (60757657)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 神秘思想 / モデルネ / ドイツ革命 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の対象となるアルフレート・デーブリーンの四部作『1918年11月 あるドイツ革命』は、『市民と兵士 1918年』(総396ページ)、『裏切られた民衆』(総472ページ)、『前線部隊の帰還』(総556ページ)、『カールとローザ』(総754ページ)から成る壮大な時代絵巻であり、本年は作品の精読を中心に研究を進めた。 本研究は、ドイツ革命における神秘思想の展開と衰退に主眼を置いて、「霊界(Geisterreich)」の解明を目指すものである。まず、「霊界」と交流する視霊者たち―フリードリヒ・ベッカーとローザ・ルクセンブルク―に関する箇所をピックアップした。ベッカーは、デーブリーン文学の主人公の系譜を継ぐ創作上の人物である。現段階で、ベッカーが戦争体験に起因するノイローゼをおこす中で神秘思想を抱き、ドイツ革命の混乱期に神秘思想を実現しようとする軌跡を追った。これを踏まえて、次年度にベッカーの神秘思想の特徴を明らかにする。その際、彼が妄想の中で対話を交わすドイツ中世の神秘主義者ヨハネス・タウラーの思想を理解する必要があり、その準備として、本年はタウラーの説教集を繙き、タウラーの神秘思想への理解を深めた。また、ローザ・ルクセンブルクに関して、彼女の社会主義思想を理解するため、『経済学入門』と『資本蓄積論』を、彼女の人柄を理解するため、彼女の手紙や同時代人の証言、伝記を分析した。次年度に、デーブリーンの描くローザ・ルクセンブルク像と実在した革命家の人物像との比較を行う予定である。二人の体験の分析を基に、デーブリーンの考える「霊界」の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、二人の視霊者の体験に即してデーブリーンの「霊界」を再構築するものであり、各体験についてそれぞれ研究成果を発表する予定である。現段階で、ベッカーに関して論文の草稿を作成中であり、ローザ・ルクセンブルクに関しては、「デーブリーン『一九一八年十一月』における「霊界」―ローザ・ルクセンブルクの視霊体験」という題名を冠した論文を学術雑誌に投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年の研究を通して新たな課題が浮上してきた。それは、デーブリーンが執筆したときの状況(ナチス政権下で、デーブリーンはアメリカで亡命生活を送っていた)を踏まえて、デーブリーンのドイツ革命観を解明することであり、ドイツ革命に関する歴史書とデーブリーンの政治的エッセイを調査して、研究を進めたい。現在、『1918年11月』に関する二次文献の調査を通してこれまでの研究の動向を押さえており、さらに文献調査を進め、次年度に研究の成果を論文にまとめるつもりである。
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Research Products
(2 results)