2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06613
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Research Institution | Seisen University. |
Principal Investigator |
藤本 猛 清泉女子大学, 文学部, 講師 (50757408)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 北宋 / 宦官 / 政和の官制改革 / 睿思殿 / 承受官 / 神霄玉清萬壽宮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、中国・北宋における宦官の政治活動について、これまで限定的にしか利用されてこなかった文集等の史料を使い、その具体像を明らかにする。特に政和の官制改革がもつ政治的意義を解明し、それをもとに北宋後半から南宋にかけての政治体制の変化を指摘する。そのためにまず宋代における宦官の官制についての実態を解明し、つづいて政治的活動が顕著な宦官に着目して、彼らの政治活動を具体的に考察する。その上で、北宋末・政和の官制改革がもつ政治的意義の解明を目指す。 かかる目的の下、平成27年度においては、主に以下の2点について研究を進展させた。まず第1点目として、宦官の昇進過程の解明のため、彼らが所持する官職について、主に『全宋文』『宋代詔令全集』などの史料を駆使し、そのデータ収集・整理作業を行った。これは現在進行中のものであり、ひきつづき平成28年度にも実施する予定である。次に2点目として、北宋末において特異な政治的活動を行った宦官たちに注目し、彼らが所持する「睿思殿」「承受官」などを冠する官職について考察を行った。その際には、当時の具体的な諸相を探るだけではなく、北宋一代を通じてその官職が果たしてきた役割を確認しながら、そこにどのような変化があり、その背景にある時代的特徴について推察した。この内容については学術論文としてまとめ、発表した。 またその後、文官と同様に宦官が所持した「神霄玉清萬壽宮」に関わる官職に着目し、それがいかなる施設であったのかについて、関連する碑文の拓本画像を、所蔵する博物館から取り寄せて考察を行い、その結果の一部を大阪市立大学にて学会発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種史資料を用いてのデータ収集・整理作業はおおむね順調に進行しており、次年度以降における分析・考察の前提となり得ると思われる。またその作業と並行して計画していた、特徴的な官職を取り上げて、個別の研究論文を作成・発表するという目的も達成することができている。以上のことにより、全体として本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、前年度に行っていた史料データの収集・整理を継続して行う。これにより少なくとも北宋における宦官の官職について、可能な限りこれを収集し、その時期に注意しながら宦官官制の復元を試み、当時の宦官が官僚の一としてどのような昇進過程にあったのかの解明を目指す。また特に北宋末の政和官制改革の時期に注目し、当該時期から顕著となる宦官の政治活動について、その実態解明を行う予定である。
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Research Products
(2 results)