2015 Fiscal Year Annual Research Report
憲法上の平等原則の解釈について-社会構造上の差別の是正に向けて-
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15H06624
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
高橋 正明 帝京大学, 法学部, 助教 (50757078)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 憲法学 / 公法学 / 比較憲法学 / 平等原則 / 社会構造上の差別 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会構造上の差別の是正の在り方に焦点を当てつつ、憲法上の平等原則の保障内容及び法規範性の全体像を明確化することを目的とするものである。具体的には、「社会構造上の差別」に該当する行為を、①法令の文言上は人種や性別に中立的であるものの、社会構造上の理由により、特定の人種や性別に属する者に不均衡な効果をもたらす国家行為、②私人による種々の差別行為、に類型化した上で、その立法及び司法的規制の在り方について、アメリカ・カナダの議論を素材に憲法の観点から分析を行った。 まず、研究計画書に従い、2016年2月、上記①・②に関する先駆的研究者であるジョージ・ワシントン大学のMichael Selmi教授及びブリティッシュ・コロンビア大学のMargot Young教授と意見交換を行った。意見交換では、アメリカ・カナダの平等理論が対照的な性格を有することもあり、本研究の方向性に関しても両教授から異なった角度からの意見を得ることができた。これによって、本研究の方向性及び我が国における本研究の独自性を複合的視点から相対的に把握することができた。また、アメリカ議会図書館及びブリティッシュ・コロンビア大学法学部図書館において、本研究に関係する資料の収集を行った。 次に、社会構造上の差別の是正に関する基礎的分析視角については、憲法上の平等原則の保障内容に関する総論的考察を行うにあたって言及しており、その成果は、拙稿「憲法上の平等原則の解釈について(一)~(三)・完――社会構造的差別の是正に向けて――」に反映させた。また、アメリカ連邦最高裁判例の平等理論についても、アファーマティブ・アクションの違憲審査の在り方を論じる際に、その意義と課題を論じており、その成果は、拙稿「アファーマティブ・アクションの違憲審査の在り方について――『動機審査理論』と『成果主義理論』の検討を中心に――」に反映させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、基礎的文献の収集と読解を通じてアメリカ・カナダの平等理論に関する基本枠組について一定の知見を得ることができたと同時に、研究実績の概要欄に示したように、海外研究者との意見交換を通じて、研究の基本的方向性の妥当性を複合的視点から確認できたことを挙げておきたい。 次に、上記公表論文において、アメリカ連邦最高裁判例の平等理論の基本枠組を整理するとともに、憲法上の平等原則の保障内容に関する総論的考察を加えたことで、社会構造上の差別に対する具体的規制の在り方について、今後さらに掘り下げた検討を行うための基礎的分析視角を提示できたことも、成果の一つであるといえる。これらの点を考慮すれば、平成27年度の研究を通じて、平成28年度における、より発展的な研究に向けた基盤を築くことができたと考える。 以上のことから、本研究課題の研究目的は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の基礎的研究を通じて研究の基本的方向性の妥当性を検証することができたため、今後はそれらの知見を踏まえつつ、差別概念の多義性、人権保障における公的・私的領域の相互関係性に関する論点などについて憲法の観点から考察を行い、上記研究課題に関する検討をさらに深める予定である。 具体的方法としては、アメリカ・カナダなどの諸外国の文献の読解を継続するとともに、平成28年度も、海外の先駆的研究者との意見交換及び海外資料の収集を行う予定である。これらの研究成果は平成28年度中に論文の形でまとめて公表したいと考えている。
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Research Products
(4 results)