2015 Fiscal Year Annual Research Report
タンニン酸を使用した象牙質コラーゲンの強化と象牙質接着耐久性の向上
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15H06644
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
會田 悦子 日本大学, 松戸歯学部, 助手(専任扱) (90758088)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | タンニン酸 / コラーゲン / 接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在臨床において歯冠補綴装置装着時に接着性レジンセメントが主に使用されている。本申請では,接着性レジンセメント使用の際に行われる酸処理によるコラーゲンへのダメージを抑制し,接着強さを向上させるため,タンニン酸を使用した接着システムを構築する。すなわち 1.象牙質コラーゲンの抽出法の確立 2.象牙質コラーゲンに対するタンニン酸の影響 3.タンニン酸による象牙質面処理が接着強さに及ぼす影響 について,象牙質コラーゲンを取り出し,タンニン酸を作用させ,熱変性温度を測定することにより,タンニン酸がコラーゲンの強化に及ぼす影響を明らかにし,これらの結果を基に,象牙質面にタンニン酸を作用させることによる接着強さへの影響を明らかにする。 このうち,平成27年度においては,1についての研究を行った。 ウシ象牙質は,高速回転切削器具(タービン)にて切削したもの,ミルを使用し機械的に粉砕したもの,電気カッターを用いブロック状に切り出したものの3種類を準備し,それぞれ脱灰前に示差走査熱量測定装置(DSC)にて測定をおこなったが,有機質の熱変性による挙動は検出されなかった。また,示差熱-熱重量同時測定装置(TG-DTA)にて有機質を完全燃焼させると,20~30%の有機質が存在していることが明らかになった。 20~30%の有機質が存在するにも関わらず,DSCにて熱変性の挙動を検出できない原因が,無機質に対する有機質の絶対量が少ないことであると考え,これらの無機質をEDTAにて脱灰し,無機質の量を減少させた後,DSCにて熱分析を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は,タービンにて切削した象牙質粉末,機械的に粉砕した象牙質粉末,および象牙質ブロックを用い,熱分析を行った。それぞれの試料をTG-DTAにおいて900度まで加熱し,有機質が25~30%存在することが確認できたが,DSCにてその有機質の熱変性による挙動を検出することができなかった。これは,象牙質全体の無機質の量が多く,有機質の絶対量が少ないためであると考えた。そのため,これらをEDTAにて24時間および7日間脱灰し,無機質を減少させた後にDSCにて有機質の熱変性の挙動を確認したところ,有機質の絶対量が増えるとDSCにて有機質の熱挙動が検出されることが判明した。 しかし,タービンにて切削したものに関しては,熱挙動を示さなかったため,現在,その原因を解明しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,象牙質コラーゲンを取り出し,DSCにて熱挙動が確認された時点で,そのコラーゲン粉末に0.1,1,10,20wt%のタンニン酸溶液を作用させる。これらの試料のらせん構造の解離に至るまでの温度の変化を確認するために,DSCを用いて,熱変性温度を測定する。さらに,これらの試料の耐酸性を確認するため,40%リン酸溶液を15秒間, または,10%クエン酸溶液を10秒間作用させる。これらの試料のらせん構造の解離に至るまでの温度の変化を確認するために,DSCを用いて,熱変性温度を測定する。 その後,新鮮抜去牛象牙質被着面に0.1,1,10,20wt%のタンニン酸溶液をそれぞれ30秒,1,10,30分,1,3,6,12,24時間37℃恒温槽中で作用させ,接着性レジンセメントの象牙質に対する接着性を評価する。
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