2015 Fiscal Year Annual Research Report
新規機能材料創出に向けた難培養性鉄酸化細菌の単離と酸化鉄生成機構に関する基盤研究
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15H06654
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
鈴木 智子 日本女子大学, 理学部, 助教 (30623772)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 微生物 / 難培養性細菌 / 鉄酸化細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、水圏環境中に生息する特定の鉄酸化細菌、Leptothrix ochraceaとGallionella ferrugineaが生成する管(鞘)状およびらせん状の酸化鉄構造体を機能性材料として利用するために、これら細菌を単離、培養方法を確立するとともに、酸化鉱物の生成機構を明らかにし、その形成を人為的に制御して細菌由来の新規素材の安定大量供給法の確立を目指すものである。当該年度より着任した場所で、新たな採取地を確保する必要があったため、近隣の湧水箇所を調査し細菌の採取源を探索した。その結果、学内の井戸水(3箇所)は鉄イオンがほぼ含まれず、鉄酸化細菌の生息は見られなかった。近隣では神田川への排水口から褐色の付着物を回収し鞘状の酸化鉄を確認したが、夾雑物が多く単離源には向かないと考えられた。また、近隣の商業施設内の庭園にある井戸では、非常に高純度でほぼ夾雑物のない状態の鞘状酸化鉄と当該細菌の生息を顕微鏡観察により確認したが、商業施設からの許可が下りず、採取を断念せざるを得なかった。そのため、引き続きLeptothrix ochraceaの採取源の確保に努めている。一方で、らせん状酸化鉄を生成する細菌の生息地が皆無であった為、既に単離培養されている同様のらせん状酸化鉄を生成するFerriphaselus amnicolaを海洋研究開発機構の加藤真悟博士から分譲頂き、らせん状酸化鉄の生成過程ならびにその機構について解析していくための準備を進めた。また、Galionella属細菌と同様に菌体の1極からセルロース繊維を生成するGluconacetobacter xylinusを新たに研究材料として取り入れた。これは、当該細菌の特性である有機無機ハイブリッド構造の解析の一助とするためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度、半年間では、研究材料の採取源の探索や、基本的な実験機器の整備に予想以上の時間と労力を費やしたため、研究の成果としては想定よりもやや遅れていると感じる。近隣での当該細菌の採取源が確保出来ない場合は岡山大学から採取する予定であったが、当該細菌が想定以上に地下水源から離れると死滅する速度が速いことがあり、やはり近隣での採取源の確保は急務といえる。しかしながら、他の単離細菌を利用することにより研究の最終目標である細菌が作る新規素材の安定大量供給法の確立に向けての研究は予想以上に進められる可能性が出てきたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
難培養性鉄酸化細菌Leptothrix ochraceaとGallionella ferrugineaの単離と培養方法の確立は、本研究の柱のひとつであるが、採取源確保の問題から期間内での目的達成が困難である可能性が出てきた。研究の最終目標は鞘状酸化鉄とらせん状酸化鉄の人為的生成と制御であることから、他のらせん状酸化鉄を生成する単離菌株や、その生成機構に関わると思われる同様の生態機構を持つ単離細菌を利用し、その目的を達成するためのブレイクスルーとしたいと考える。しかしながら、当該細菌の単離は諦めずに探索範囲を広げて近隣での採取源を探すとともに、学内の井戸水に鉄源を添加した場合の両菌の生育についても調査する予定である。
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Research Products
(3 results)