2015 Fiscal Year Annual Research Report
除染後の農地におけるバイオエタノール生産のためのエネルギー作物に関する研究
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15H06661
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中島 亨 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (50757888)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | エネルギー作物 / ミスカンサス / 福島除染後の農地利用 / 土壌炭素貯留 / 土壌物理環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
化石燃料等の代替エネルギーとして世界中でバイオエタノールの持続可能性についての検討や取り組みが推進されている。多収量エネルギー作物の一つであるミスカンサス等のセルロース系の植物原料由来のバイオエタノールは、トウモロコシ等の食糧を原料とした場合と比較して食糧と競合しない、また本来農地として適さない場所でも栽培可能であり土地利用転換による土壌への炭素固定や土壌環境改善の可能性があるとされている。また福島県では放射性セシウムの除染後の農地の有効利用が喫緊の課題である。本研究において除染後の農地におけるミスカンサス栽培時のバイオマス収量の定量的データ、作物内の放射性セシウムの移行、土壌の物理性・化学性などの土壌環境に及ぼす影響を評価することを目的とする。そこで福島県飯館村比曽においてバイオエタノール生産のため、除染後の農地でのミスカンサス栽培に関する研究を行うことを目的とした。対象とするエネルギー作物はジャイアントミスカンサスとミスカンサス(Miscanthus×sinensis種)とした。栽培実験を始める前に、予備実験として北海道でのミスカンサスの栽培実績のある土地において土壌分析を行い土壌環境の評価を行った。 除染後の農地有効利用の一環としてバイオエタノール生産のためのミスカンサス栽培が行われ、バイオエタノールの製造がその地域で実現すれば福島県において再生可能エネルギー生産地となるだけではなく復興策・地域振興の観点からも大きなインパクトがあると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象エネルギー作物であるジャイアントミスカンサス(Miscantus×Giganteus種)は高密度の植生と強固で永続性のある地下茎を併せ持ち高いバイオマス生産が可能、また低温での高い光合成能力があるとされている。そこで、当該年度は日本でジャイアントミスカンサスに関する研究や栽培を行っている北海道大学北方生物圏フィールド科学センター山田敏彦教授、Dr. Kossonouの協力のもとジャイアントミスカンサス、塩塚(Miscanthus×sinensis種、愛媛県塩塚高原にて自生)、牧草地で土壌サンプリングを行い、各種土壌分析を行った。 2016年5月に福島県飯館村比曽の除染後の農地において実験圃場を確立した。実験圃場のレイアウトはランドマイズドブロックデザインで統計的に処理できるようにし5m×5mの面積で三連複に設定した。対象作物はジャイアントミスカンサス、明野(Miscanthus×sinensis種、山梨県明野地域にて自生)、飼料用トウモロコシ、緑肥用ヒマワリ、その他にコントロールとして、エネルギー作物を栽培しない区画を設けた。つまり合計15の実験区画を設定し実験圃場を確立した。今後の研究の具体的な予定は、①ミスカンサスの各生育段階での草丈(茎長・稈長),茎数,葉数などの形態的形質を測定、②2016年度の秋にミスカンサスを収穫し、生育期間中に生産されるバイオマス乾物重等の収量を測定する。その他以下の研究項目が進捗中である。(1)ミスカンサス作物内の土壌からの放射性セシウムの移行評価、(2)土壌の物理特性、(3)土壌の化学特性。
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Strategy for Future Research Activity |
福島県飯館村比曽地域において2016年度に始めた実験圃場(菅野啓一さん所有の農地)を今後引き続き継続していく予定である。2016年度の秋に収穫予定であり、エネルギー作物、ジャイアントミスカンサス、明野(Miscanthus×sinensis種、山梨県明野地域にて自生)、飼料用トウモロコシ、緑肥用ヒマワリの収量を毎年測定する。またエネルギー作物を栽培した際の土壌炭素貯留・土壌環境の変化は1、2年での評価では不十分であるため今後も継続してモニタリングして行く。また、本研究の成果を基にして福島県飯館村の意欲のある農家さん共にエネルギー作物の栽培を拡大できないか、拡大する際の課題や問題点等について議論を行う。 今回の研究において収穫したエネルギー作物の利用について研究の展開を考えている。研究協力者やNPO、福島県飯館村の地元企業とともに議論し共にエネルギー作物の具体的な利用等について模索する。例えば、ジャイアントミスカンサス、明野ではバイオエタノールを小規模にて実際に製造する。トウモロコシは第一世代のバイオエタノールの製造及び地元のブランド牛の飯館牛への飼料とする、ヒマワリはバイオディーゼル等の製造等を協力者とともに考え進めていく予定である。本研究は始まりに過ぎず福島県復興のために研究活動を続けていく。
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Research Products
(2 results)