2015 Fiscal Year Annual Research Report
ガンダーラ仏教彫刻における生天思想の造形-ディオニューソス神関連図像を中心に
Project/Area Number |
15H06677
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田辺 理 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (40757209)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | ガンダーラ / ディオニューソス神 / バッカス神 / 飲酒饗宴 / ギリシア・ローマ美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ギリシア・ローマ美術に見られる酒神として有名なディオニューソス神と眷属の図像と、ガンダーラ仏教彫刻に見られるディオニューソス神と眷属の図像を比較し、後者の図像が仏教の来世観(生天思想)を造形化したものであることを解明することである。 ギリシア・ローマ美術に表現された、ディオニューソス神の神話に関連する図像のテーマは数多く存在する。特に多いのが、帝政ローマ時代の石棺やモザイクに表現されたディオニューソス神と眷属による飲酒饗宴や、歌舞奏楽に関連する図像である。それ故、はじめに、これらの諸図像を内容によって分類・整理し、ギリシア・ローマ美術作品に見られるディオニューソス神に関連する図像のテーマを明らかにする。 この研究を行うために、2016年度は資料調査及び資料収集を行った。主に、ローマを中心に博物館や遺跡を訪れ、博物館に収蔵されているギリシアの陶器画や帝政ローマ期の石棺の中で、特に申請者の研究にとって重要な、ディオニューソス神と眷属に関わる図像を表現した作品の調査を行い、研究資料を充実させた。訪問した博物館は、ローマ国立博物館、バチカン博物館、カピトリーノ博物館、 である。また、ローマ近郊ではヴェレートリの考古学博物館を訪れ、有名な石棺の写真の細部を撮影した。さらに、ローマのドイツ考古学研究所を訪れ、日本では手に入らない論文や著書の複写を行い、博物館にて撮影を行うことができなかった写真資料を収集し、補足を行うことができた。今回の調査では、特にディオニューソス神と眷属を表現した石棺の写真を多く撮影することができたので、今後の分析に生かすことができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ローマの博物館を中心に調査を行うことができたことによって、本研究遂行に必要な、ディオニューソス神と眷属の図像資料を予想した以上に多く収集することができたため。特に、帝政ローマ時代の石棺美術、モザイクの美術の実見調査を来ない、写真資料を収集することができた。概ね研究計画通りに研究を遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、トルコ国内を中心に調査を行う予定である。トルコで訪れる予定の博物館は、イスタンブール考古学博物館、イズミール考古学博物館、パムッカレの考古学博物館などである。これらの博物館において、ギリシアの陶器画、帝政ローマ時代の石棺、彫刻、モザイクなどを調査する。また、アンターキア(ハタイ)の考古学博物館にはローマ帝政時代のモザイクが多く所蔵されているが、現在トルコにおいてはテロが頻発しているので、政治情勢を見極めて調査を行うか否か、調査地を変更するか否か決定したい。調査地を変更する場合、ギリシア、アテネを中心に調査を行うことを検討中である。 今後、これまで収集した資料を利用して、学会発表を行い、論文を投稿するつもりである。
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