2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H06690
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鈴木 拓 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (60754885)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | ファノ多様体 / ピカール数 / 擬指数 / 有理曲線 / 端射線収縮射 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,重要な多様体のクラスであるファノ多様体の性質を明らかにすることである.本年度は研究計画通り,(精密化された)向井予想に関する研究を行った.これは,「任意のファノ多様体に対して,nを次元,ρをピカール数,iを擬指数としたとき,ρ(i-1)≦nが成立し,等号成立は多様体が射影空間の直積であるときに限る」という予想である.このような多様体の不変量が持つ有限性を研究することは,さまざまな分類問題において不可欠であり,代数幾何学研究におけるその優先度は高い.実際,これまでに向井予想に関する膨大な先行研究があり,低次元(n≦5)の場合,高擬指数(i>n/3)の場合,特別な多様体(等質空間,トーリック多様体,3次有理連結多様体等)の場合では,正しいことが証明されている.また,本研究者による6次元ファノ多様体に関する結果として,多様体上の任意の二点が有理曲線による短い長さの鎖で繋がれるような場合や,4次有理連結な6次元ファノ多様体の場合において,向井予想が成り立つことが示されている. 本年度は,端射線収縮射(extremal contraction)の構造を見ることにより,より一般的な場合について検証を行った.結果として,6次元ファノ多様体が(1)ファイバー型の収縮射(contraction of fiber type)を持つ場合,(2)因子型の収縮射(divisorial contraction)のみ持つ場合,それぞれにおいて向井予想が成り立つことを証明し,したがって,小収縮射(small contraction)を持たない6次元ファノ多様体について,向井予想を肯定的に解決した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初における本年度の研究計画は,向井予想を,(A)n=6の場合,(B)i=n/3の場合,(C)ブローアップの場合,それぞれの場合において検証することであった.本年度は計画通りに上記の研究を行い,特に研究(A)に関して,新たな結果を得て大幅に前進した.この結果では,ファノ多様体の端射線収縮射の構造を扱っている.これはn>6の多様体に対しても大きな意義があり,研究(B)にも多くの情報を与えている.また,因子型の収縮射を持つ場合について考察していることから,研究(C)とも密接に関連している.このように,研究(A)だけでなく研究(B),(C)においても,順調に進捗している.更に,このような端射線収縮射の構造に着目する試みはあまり行われてこなかったため,本研究に新たな視点をもたらしたことは大きな進展である.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,上記の研究(A),(B),(C)に加え,(D)4次有理連結多様体の場合,(E)更に一般の場合について,向井予想の検証を行う.当初の計画通り,多くの具体的な多様体の例について,ピカール数,擬指数,次元の計算や,有理曲線の分裂や変形の挙動を調べ,それらの関係の定式化を図る.また,本年度の研究成果をもとに,端射線収縮射の観点から,ファノ多様体上の有理曲線の幾何学を調べる.具体的には,小収縮射を持つ場合の6次元ファノ多様体,ファイバー型の収縮射を持つ6次元以上のファノ多様体,因子型の収縮射のみ持つ6次元以上のファノ多様体について,有理曲線の挙動を明らかにする.また,ファノ多様体上の極小有理曲線の接線が成す多様体(VMRT)に着目した新たな検証についても試みる.
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Research Products
(1 results)