2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本伝統絵画で幼児の「感覚の互換性」を活かす鑑賞教育法の実践的研究
Project/Area Number |
15H06713
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Research Institution | Shigakkan University |
Principal Investigator |
池永 真義 至学館大学, 健康科学部, 准教授 (50755965)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 鑑賞 / 感覚の互換性 / 日本伝統絵画 / 実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、幼児の「感覚の互換性」を促進しうる教育法の基礎となる、日本伝統絵画の選定作業を課題とした。西洋絵画との比較検討も含め、幾つかの美術館・博物館等が所蔵する作品を分析しながら、試行的に勤務先の学生を対象に鑑賞活動を実施した。その中で、日本伝統絵画の表現特質である平面性や装飾性、工芸性といった強調点が顕著な作品の場合、鑑賞者が視覚以外の触覚等の諸感覚を使いながら自身の創作活動を豊かにできる点が明らかになった。中でも金箔等を多用した作品に関しては、学生の作品に顕著な工芸性を見ることができた。 また、日本伝統絵画の技法的側面を理解するため、実際に日本画を製作するプロセスを調査した。完成された作品だけでなく、いかなる方法・素材・用具の扱いで創造的過程のプロセスが進行するのかについて、いくつかの段階に分節化し、学生に作品とともに理解させた結果、完成した作品だけを鑑賞する以上に、自身の表現に対する意欲や試行錯誤・創意工夫がうかがえた。この点で、製作プロセスの分析、調査は今後もさらに必要になることが明らかになった。 くわえて、幼稚園園児の表現活動の観察を通して、鑑賞活動が表現活動に与える影響について調査を行った。写真という二次元性が強く表面の質感が希薄な表現の場合、園児が自身の表現活動に与える影響は、単純に視覚性によるもののみで、触覚や身体感覚等の諸感覚を活かした表現にまでは至りにくいことが明らかになった。 今後は、日本美術史家や学芸員への取材等を通して、本年度の実践課題の要因を明確にしたうえで、幼児を対象とする鑑賞・表現活動の実践的枠組み(教材化、指導方法の精緻化)を練り上げていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は実践まで実施する予定だったが、実施するにいたらなかった点があげられる。理由として、基礎的な理論研究(感覚の互換性に関する美術史的及び幼児教育学的研究)にかなり時間を割いた点、またそのことと連動して相手校との日程調整がつかず、次年度の持ち越しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、一つは実験的要素の強い実践研究のため、対象とする幼児の母体数を限定し、その範囲の中で「感覚の互換性」を促進する質的要因を詳細に分析、考察したいと考える。また、絵画作品の模型性(レプリカ)と実在性(本物)との比較検討も考察の対象に加える(平面性の強い作品の場合、両者の違いがほとんど見られない等の仮説を立てて実施)。
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