2015 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスの肯定的評価が中央実行系の処理資源および選択的注意機構に与える影響
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15H06722
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
西村 律子 愛知淑徳大学, 心理学部, 講師 (10757727)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 実験心理学 / 認知心理学 / ストレス / 選択的注意 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ストレスを肯定的に評価することが,ストレス状況下での選択的注意機能を向上させることを明らかにするために実施されている。近年ストレス状況下であっても「ストレスは生体的反応・認知的反応を高めるために有益である」,と肯定的に評価することで,心臓血管系の機能向上や,認知成績の向上が認められている。このことを受け,本研究は,認知機能の中でも「選択的注意」に焦点を当て,ストレスの肯定的評価との関連を検討している。 平成27年度には,ストレス状況下での選択的注意機能を検討した。具体的には,観察者とビデオカメラの前でスピーチを実施すると教示される「ストレス条件」と,観察者やカメラがない状況で言語流暢性課題を実施すると教示される「非ストレス条件」を設定し,それぞれの条件下でフランカー課題(妨害刺激を無視しながらターゲットの同定を要求)を実施した。注目したのは,妨害刺激の処理される程度(適合性効果量)であった。通常,中央実行系が合目的的な刺激の処理を促進するため,妨害刺激の処理はそれほど促進されないが,ストレス条件では,ストレスに起因するネガティブ感情の処理により実行系の処理資源が枯渇し,妨害刺激を効率的に排除することが難しくなり,処理が促進される(適合性効果量の増大)と予測された。 その結果予測通り,ストレス条件においてのみ有意な適合性効果量が観察された(Nishimura, 2016. CNS@NY)。この結果は,ストレス状況下において,妨害刺激を効果的に排除できないことを示唆し,ストレスによる中央実行系の処理資源の枯渇が我々の認知機能低下に影響を及ぼす可能性を指摘できた点で意義深いと考える。それと同時に,本研究の結果は,これまでの先行研究と整合性があり,本研究で設定したストレス状況が適切であったことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗は,当初の予定通りである。 申請時の計画では,初年度に「ストレス状況下での選択的注意機能の検討」,次年度に「ストレスの肯定的評価が選択的注意機能に及ぼす影響の検討」であった。 初年度の実施計画は,具体的には最初の2か月で実験環境を整え,ストレス状況下での選択的注意機能の検討に関する実験実施することであった。平成27年度は,その計画通り,実験環境を整え,実験実施することができた。さらに,仮説通りの結果を得ることができたため,国際学会にて成果報告することもできた。 当初,平成27年度の結果次第では,設定したストレス状況が適切ではない可能性が考えられたが,平成27年度に設定した実験環境で先行研究とも整合性のある結果を得ることができたため,平成28年度は,その実験手続きを踏襲して引き続き実験実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度である平成27年度の進捗状況は,概ね順調であったため,引き続き当初の計画通り実験実施していく。平成28年度の計画は,「ストレスの肯定的評価が選択的注意機能に及ぼす影響の検討」である。平成27年度に,ストレス状況下では,課題とは無関連な妨害刺激を効率的に無視することができず,むしろ処理は促進されることが示された。そこで,平成28年度は,平成27年度と同じ手続きによってストレス状況を設定したうえで,実験参加者を3群にわけ,「ストレスの肯定的評価と選択的注意機能の関連」を検討する。 具体的には,「ストレスによる覚醒は有害なものではなく,ストレス状況での課題遂行を手助けするものである」ことを説明するA)ストレス肯定的評価群,「ストレス状況で不安を解消するために最も有効な手立てはストレスを無視することである」と説明するB)ストレス無視群,何の説明も与えないC)統制群の3群である。これらの教示を与えたのち,平成27年度の実施計画と同様のフランカー課題および注意機能検査(D-CAT)を実施する。 もしストレスの肯定的評価が選択的注意機能を向上させるならば,ストレス状況であっても中央実行系の処理資源が枯渇しないため,適切に妨害刺激を無視することができ,適合性効果量が減少(あるいは消失)すると予測される。 実験環境はすでに整っているため,最初の4か月(平成28年8月まで)で実験を完了する予定である。その後は平成27年度と平成28年度の結果をまとめ論文化する。また,平成28年度には2つの国際学会参加も予定しているため,そこで成果報告をする。
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Research Products
(1 results)