2015 Fiscal Year Annual Research Report
基礎看護教育における患者との関係性に着目した医療安全の検討
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15H06733
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
下岡 ちえ 同志社女子大学, 看護学部, 講師 (30367586)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 看護基礎教育 / 医療安全 / 患者 / 関係性 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本医療機能評価機構による医療事故(ヒヤリ・ハット)情報収集件数が、2015年には3654件であり、その概要では「療養上の世話」が1229件(36.4%)と一番多い割合を示した。 2016年から過去5年間の医学中央雑誌においてキーワードを「医療安全」、「看護学生」とした結果、67件が検出された。その中で、4年生大学における基礎看護学実習Ⅱの学生を対象とした研究は1件であり、実習中のヒヤリ・ハット事例は、「療養上の世話」が8事例中7事例を占め、かつ、その要因には「注意不足」を最も多くあげていた。過去10年間へ範囲を拡大した結果では、先の2つのキーワードで149件、全ての臨床実習を対象とした研究は87件であった。これらから、実習中に①ヒヤリ・ハットを体験した学生が4~9割であること、②「療養上の世話」という日常生活を行う場面に必要とされる援助に多いこと、③その原因は「知識不足」や「注意不足」という個人の問題に収められていること、などが明らかとなった。 2016年3月の医療安全学会では医療安全に関する問題解決について、医療従事者のみならず、工学分野、患者会、マスコミなどの多方面から提起されていた。中でも、ヒューマンエラーに関する研究は多く、ヒューマンエラーを誘発した原因・要因を分析・評価しなくては本質的な改善につながる対策を講じることが困難であり、「がんばる」等の個人レベルの対策方法で止めないことの重要性を述べていた。 昨年度は、教員を対象にインタビュー調査を実施し、教員が収集した学生のヒヤリ・ハットの発生過程を根本原因分析により分析した。その結果、学生側では、療養上の世話において「見守り」が必要な技術レベルであること、患者の要望に「看護の視点をもち行動できていないこと」、患者側では、「学生の実践可能な援助範囲を理解できていないこと」などが抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本医療機能評価機構による病院で発生した医療事故(ヒヤリ・ハット)情報収集件数は、毎年増加傾向にあった。事故の概要では「療養上の世話」の占める割合の多いことが報告されていた。 学生を対象とした臨床実習におけるヒヤリ・ハットに関する文献検索の結果から、学生のヒヤリ・ハットは「療養上の世話」に多く、その原因には、「注意不足」「知識不足」が多く挙げられており、個人の問題として収められていることが明らかとなった。 医療安全学会では、医療安全に関する問題解決の1つとして、ヒューマンエラーに関する研究が多く、ヒューマンエラーを誘発した原因・要因を分析・評価しなくては本質的な改善につながる対策を講じることが困難であり、個人レベルの対策方法で止めないこと等が報告されていた。 教員を対象に、臨床実習における学生の発生させたヒヤリ・ハット発生状況・発生過程についてインタビュー調査を実施した。出来事流れ図を作成して根本原因分析を実施した結果、学生のヒヤリ・ハットの発生原因には、学生側の原因のみならず、患者側の原因も抽出された。 これらの結果をふまえて、臨床実習において学生が発生させたヒヤリ・ハットの発生状況・発生過程を明らかにするために、学生への質問項目とインタビューガイドを作成途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、教員から収集した学生のヒヤリ・ハットの分析を続けるとともに、本調査へ向けて質問項目の洗練、およびインタビューガイドを作成する。最後に、学生のヒヤリ・ハット事故防止策を見出すとともに、その結果を公表する。具体的には以下のとおりである。 (1)教員へのインタビュー調査および分析を引き続き継続する。具体的には、1回生の病院実習を担当する教員から当該実習、及び、その実習を踏まえて教員が体験した学生のヒヤリ・ハットの情報を収集して、記述する。分析には、系統的な分析手法であるRoot Cause Analysis(根本原因分析)を活用する。得られた結果をもとに、専門家会議で学生の質問項目の内容を修正する。 (2)学生への質問紙調査およびインタビュー調査を実施する。具体的には、修正された質問項目を用いて、2年生の病院実習(患者を受け持つ)において学生のヒヤリ・ハットの発生過程を当該者から収集して、記述する。面接には、質問紙およびインタビューガイドを用いる。データ分析には、学生と患者との関係性の変化がペプロウの4局面のどこにあたるかを確認するとともに、Root Cause Analysis(根本原因分析)を活用し、出来事流れ図を用いて、根本原因の要素を抽出する。また、分析により抽出された要素の内容妥当性を専門家会議で確認する。 (3)抽出された要素をもとに事故防止プログラムを作成する。
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