2015 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの紛争後社会における「正義回復」とローカルリアリティに関する人類学的研究
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15H06736
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
高 誠晩 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (40755469)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 移行期正義 / 過去清算 / 戦後補償 / 済州4・3事件 / 沖縄戦 / 台湾二二八事件 / 申立書 / 申請主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、20世紀中葉、東アジア島嶼地域における紛争(とくに、済州4・3事件と沖縄戦、台湾二二八事件)を事例として、紛争後の社会がめざすべき被害者救済や真相糾明、そして和解実現のための「正義回復」への探究と、ローカル・コミュニティが創造・発揮してきた生活知の実践との比較による人類学的紛争研究の構築を目的とする。そのために、紛争後社会における「負の歴史」の清算に有効とされてきた「移行期正義」論への批判を踏まえ、紛争後を生き抜く人びとのローカルな知と実践の潜在的可能性を探る。平成27年度は、各国・各地域における「戦後補償」及び「過去清算」のプログラムとして死者たちが各々の国民国家レベルで「犠牲者(望ましい死者)」として位置づけられていくプロセスを検証することができた。具体的には、大量死の意味づけにおいて要求される体験の立証と記述にアプローチできる史料として「済州4・3犠牲者についての申立書」と「戦闘参加者についての申立書」、「台湾二二八受難者についての申立書」を収集しその記述内容を分析することができた。そのなかでもとくに、「申立書」の受理・審査を担当する「済州4・3委員会」(韓国・ソウル市)と「二二八事件紀念基金会」(台湾・台北市)の関係者にインタビュー調査を実施し、「申立書」の審査から通知まで、その後の異議申し立てや行政訴訟などについて詳細に聞くことができた。現地調査は、各地で開催された学会・研究会に合わせて行い、研究協力者からの支援を活用しつつ研究に要する費用を最小化することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた済州道、大阪市、沖縄県、台北市での資料収集とインタビュー調査は順調に実施できたが、音声データの文字化や文献資料のDB化は当初の計画に比べてやや遅れが見られる。ただ一方で、研究の全体構想や進捗状況、成果に関しては当初の計画より多くの発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の予備調査を踏まえ、紛争体験者及び遺族個々人の思いと実践についての人類学的な調査にもとづいたミクロな分析を行い、国民国家主導の清算実践を問い直すことを試みたい。そうすることで、ナショナルな領域における「正義回復」のメカニズムとローカルな知/実践との摩擦や交渉、折衷などのようなせめぎあいの様相を複合的に検討する。研究成果については、人類学を含む人文・社会科学系の学会・研究会での報告、論文発表を行う。
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Research Products
(11 results)