2015 Fiscal Year Annual Research Report
欧文資料による近代中国語文法研究 ~文法学の中国への伝播
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15H06745
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
伊伏 啓子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (40759841)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 中国語文法 / 欧文資料 / 来華宣教師 / T.P.クロフォード / 受動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は実施計画に記載した通り、19世紀の欧文資料を用いた中国語の被動文研究を行った。さらに、これまで資料調査を行ってきたアメリカ人来華宣教師T.P.クロフォードの中国語研究について一部をまとめた。 アメリカ人来華宣教師T.P.クロフォードの中国語研究では、これまでの資料調査の内容を整理し、彼が中国で出版した多数の書籍には、官話で書かれたものと上海語で書かれたものがあり、上海語の書籍は彼が独自に創案した符号を用いて著されていること、また、その特殊な符号は彼の妻や友人らによって使用され、同時期に複数の符号を用いた上海語書籍が出版されていることを述べた。この内容は『関西大学中国文学会紀要』37号(平成28年3月)に掲載した。平成27年11月には日本中国語学会全国大会において「早期西洋人中国語文法書に見られる受動態について」の題目で口頭発表を行い、欧文資料を用いた中国語の被動文研究の可能性を示した。 資料調査は、バーゼル伝道会古文書館、ロンドン大学SOAS図書館、大英図書館、ライデン大学図書館にて本研究課題に関連する資料調査・収集を行った。とくにSOASと大英図書館では、James Summersの一連の著作について閲覧と複写・写真撮影を行い、現在整理中である。特に今回入手した講義録はのちのA Handbook of the Chinese Language1863と関わりがあると思われる。平成28年度はこれらの資料の比較を行う予定である。ライデンではオランダ中国学の礎となった多数の資料を閲覧し、目録を入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では欧文資料に見られる「受動態」に関する記述を調査分析し、著者の母語や著作の執筆言語の文法と比較を行う予定であった。欧文資料の調査分析は順調に進んでおり、口頭発表を一度行った。各言語の文法との比較は現在進めている。これらの結果をまとめて論文にするための準備も進んでおり、成果の公表は研究期間内に行うことを目指す。 したがって今年度の研究計画と対照した場合、おおむね順調に推移していると言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
当初研究実施計画の平成28年度部分に記載したとおり、欧文資料に見られる「品詞分類の方法と定義」について考察を行いたい。さらに、すでに口頭発表を行った「欧文資料に見られる”一個”について」、西洋言語の冠詞の概念との関わりを再考察する。さらに、T.P.クロフォードの中国語著作の資料分析をさらに一歩進め「欧文資料に見られる中国語の音声表記について」特に19世紀後半の音標符号と比較し、内容をまとめたいと考えている。このようにして近代西洋人による中国語研究の一端を少しずつ明らかにすることができるであろう。
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Research Products
(2 results)