2015 Fiscal Year Annual Research Report
トライボ反応膜におけるミクロ・ナノトライボロジー特性に関する研究
Project/Area Number |
15H06748
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
呂 仁国 関西大学, システム理工学部, 准教授 (90758210)
|
Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
Keywords | トライボロジー / 添加剤 / トライボ反応膜 / 境界潤滑 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、トライボ反応膜のの低摩擦・耐摩耗性のメカニズムを解明することを目的とした。H27年度内に下記の様な成果を得た。 トライボ反応膜の膜厚にばらつきがあるため、摩擦係数の測定に影響がある。そこで、本研究では、ball-on-disk摩擦試験機を用い、様々な荷重や速度条件を検討したところ、荷重10N、速度90mm/s、ボールの直径は13mmの際に得られた反応膜の均一性が高いことが分かった。反応膜の厚さが数十nmなので、マクロの摩擦試験機での評価が不可能のため、ミクロの評価方法を提案した。そこで、空間分解能が高い微小摩擦力センサーを導入し、軽荷重往復friction testerを構築した。この試験機の特徴は、mNオーダーの荷重条件下で、薄膜の摩擦係数の2次元分布を精確に測定できる。構築した試験機を用いて、添加剤MoDTC由来の反応膜の摩擦特性を評価した。0.5mm×0.5mmの範囲で摩擦係数の2次元分布を得た。摩擦係数の分布はEDSによって得られた元素C、O、Moの表面分布と一致することが分かった。この結果は、摩擦面のテクスチャー設計の参考となる。 境界条件下での顕微FT-IRその場観察システムを構築した。無極性基油ポリアルファオレフィン(PAO)を添加した場合は、摩擦係数(0.06)は無添加(0.12)と比べて半分低下した。極性基油ポリプロピレングリコール(PPG)を添加した場合は、摩擦係数(0.09)は無添加(0.105)と比べて僅かしか低下しなかった。顕微FT-IRのその場観察による、オレイン酸の二量体が存在するため、せん断場で分子配向し、低摩擦に至ることを明らかにした。つまり、低摩擦に実現するには、添加剤分子が金属表面との反応だけではなく、分子の配向も重要である。 H27年度内の研究結果をH28年度に1件の国際学会および1件の国内学会にて発表する予定としている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、トライボ反応膜の摩擦特性と構造を対比しながら反応膜の低摩擦・耐摩耗性のメカニズムを解明することを目的とした。H27年度内に安定したトライボ反応膜の作成および、トライボ反応膜の摩擦特性の測定系の構築を計画した。 計画どおり、荷重10N、速度90mm/s、ボールの直径は13mmの際、安定したトライボ反応膜を作成した。 空間分解能が高い微小力摩擦センサーを導入し、軽荷重往復フリクションテスターを構築した。この試験機の特徴は、mNオーダーの荷重条件下で、薄膜の摩擦係数の2次元分布を測定することができる。構築した試験機を用いて、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)由来の反応膜の摩擦特性を評価した。0.5mm×0.5mmの範囲で摩擦係数の2次元分布を得た。摩擦係数の分布はEDSによって得られた元素C、O、Moの表面分布と一致することが分かった。 顕微FT-IRその場観察システムを構築した。そこで、オレイン酸の化学吸着境界膜により、オレイン酸の二量体が存在するかどうか、摩擦に大きな影響があることが分かった。具体的に、オレイン酸の二量体が存在すると、せん断場での分子配向で、分子間が滑りやすくなり、低摩擦に至る。つまり、低摩擦を実現するには、添加剤分子が金属表面との反応だけではなく、分子の配向も重要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、主に添加剤由来のトライボ反応膜の摩擦特性に関する評価と反応膜の構造の解析を計画している。 まず、MoTDC、ZnDTPをモデル添加剤とし、摩擦面で形成したトライボ反応膜のトライボロジー特性を構築した高感度摩擦試験機で検討する。顕微FT-IRのその場観察方法を用いて、反応膜の化学変化を分析するとともに、表面形状の変化を観察する。さらに、TOF-SIMSやXPSを用いて膜の三次元構造を分析し、構造と摩擦係数の分布との関連を検討する。また、相乗効果のあるZnDTPとMoDTCを併用する場合に形成した反応膜のトライボロジー特性と三次元構造の関係も検討する。 続いて、環境負荷の少ない添加剤、例えばOBCSの反応膜についても研究を展開する。さらに、各種の添加剤を使った時のトライボ反応膜のトライボロジー特性を比較することにより、トライボロジー特性と膜の構造、添加剤の分子構造などの関係を解明し、新しい添加剤開発の設計にフィードバックする。 さらに、境界条件下添加剤の分子配向を加えて、添加剤を溶解する基油の構造を選択し、基油と添加剤とのより優れた組み合わせを見出すとともに、基油―添加剤の最適化を得ることのできる設計指針を提案する。
|
Research Products
(2 results)