2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06749
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
松本 智寛 関西医科大学, 医学部, 講師 (90405176)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 合成カンナビノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
近年急速に濫用が拡大した危険ドラッグには、主として合成カンナビノイドと呼ばれる大麻様の向精神作用を有する薬物が使用されている。これら合成カンナビノイドは多様な化学構造を有する化合物群で、そのいずれもが過去に濫用実績のない新規濫用薬物である。我々はこれらの薬物群を化学構造的に検討し、幾つかの興味深いグループに注目した。最初期に濫用され最も基本的な構造と考えられるnaphthoylindole化合物は、活性な官能基をほとんど持たないために脂溶性が高く顕著な尿中代謝物が現れにくい。しかし、構造中にアミドやエステルを有するnaphthalenylcarbamoyl化合物ないしnaphthalenyloxycarbonyl化合物は、薬物代謝反応を受けやすく尿中排泄率が高まることが予想される。実際、我々の予備実験及び実際の鑑定例において、その傾向を示唆する結果が得られている。この結果は、合成カンナビノイドが一般に脂溶性が高く尿中排泄されにくいという従来の認識を改めるきっかけとなるものであり、合成カンナビノイドの摂取証明においても従来の濫用薬物同様、代謝物分析の必要性を示唆するものである。合成カンナビノイド化合物は、前述のとおり化学構造が多様であり、全ての群について代謝物分析に対応するのは事実上不可能である。従って、いずれの化合物群において代謝物分析の重要性が高いかを知ることが必要となることから、現在、各種合成カンナビノイド化合物の生体内半減期等の速度論的パラメーターの解析を行っている。これらの実験には正確な機器分析が不可欠であり、LC-MS-MSによる分析条件を確立することが全ての基本であるが、現在必要な物質については良好な分析条件をほぼ確立している。また、薬理学的なアプローチとして、自動車運転技能に直結する毒性作用であるカタレプシー惹起作用についても現在検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回我々は、まず実験対象とする合成カンナビノイド化合物の化学合成を試みた。一部合成に成功したものの、合成物の精製に予想以上の時間を要したことから、他の実験の着手に遅れが生じた。しかしLC-MS-MSによる分析条件の検討については、概ね良好な条件が固まりつつある。現在、薬物投与実験に関する倫理申請を準備中であり、承認されしだい着手する予定である。また、カタレプシー惹起作用に関する実験ついても文献調査が概ね終了し、器材も既に配備が完了している。また、本年実施予定の薬物濃度の体内分布に関する研究とイメージング質量分析については、やや着手は遅れるものの、並行して実施してく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた化合物について、全ての合成を継続するのは時間的に困難であることから、一部購入可能な薬物については市販品の購入に変更する予定である。また、実験に使用する化合物数を削減し、極力遅延の解消に努めることとする。
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