2015 Fiscal Year Annual Research Report
地域包括ケアの理念に基づく在宅看取りを推進する市民啓発プログラムの開発
Project/Area Number |
15H06756
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
河野 政子 近畿大学, 医学部附属病院, 専門看護師 (50438248)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 地域包括ケア / 在宅療養 / 在宅看取り / 市民啓発 / 市民教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、地域に暮らす人々が、自らおよび家族の終末期を住み慣れた地域でその人らしく豊かに生きぬく、あるいは支えることを推進するための市民啓発プログラムを開発し、その有効性を検証することである。 平成27年度は、プログラム開発の準備のために1)地域包括ケアおよび在宅看取りを推進する市民教育・啓発活動に関する文献検討と、2)実際に啓発活動に取り組む市民団体の代表者にインタビュー調査を実施した。 1) 文献検討の結果、市民教育や啓発活動については専門職の実践報告にとどまり、市民の立場からその成果を研究的視点で分析し、有効なプログラムについて提言する文献はほとんどなかった。報告内容をみると、大半が在宅医療を担う医師による講演や多職種によるシンポジウム形式の公開講座で、年間1~2回、市民会館・コミュニティホールなど公的な会場で開催されることが多く、実施時間は平均2時間半前後で、募集定員・参加人数は会場規模に応じて30~600人とばらつきがあった。 2) インタビュー調査として、自身の居住地域周辺で地域住民を組織化し、10~20年間活動を継続してきたグループの代表者2名の調査結果を以下に要約する。両者とも、活動の契機として「生と死を考える」「人の生き死に絡む」というテーマと出会い、市民が地元で学べるコミュニティづくりに取り組み、先導者としての役割を発揮していた。健康病気を問わず市民が「がんという病い」や「生死」についての疑問や悩みに応えられるようなセミナーや公開講座の企画・運営を行う一方で、市民同士がテーマを絡めて語り合う場を創出していた。カリスマ的存在としてグループを先導してきた実績の裏側で、自身と同様の理念をもつ後継者の不在という課題にも直面していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インタビュー調査に関しては、研究協力者にたどり着くまでに時間を要し、当初の計画通りに進まなかった。しかし、市民啓発活動を長年取り組んできたグループ代表者2人に話を聴くことができ、活動の核心部分の共通項を見出した。この結果を受けて、今後は活動キャリアの短い研究協力者のデータも収集して比較検討し、引き続き市民啓発活動プログラム開発についての示唆を得たいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究を通して、参加する市民が主体的に考える契機を意図した参加・交流型の啓発プログラムを開発する方針で研究を進めていけばよいと確認できた。 続く平成28年度は、残りのインタビュー調査結果も踏まえて、以下のプロセスで介入研究を進める。 1) 在宅看取りに関する市民啓発プログラム試案を作成する。2) 地域の自治会や老人会に働きかけて、プログラムへの参加者を募集する。3) 地域関係者と共に地区特性に即したプログラムとなるよう修正検討を行う。4) まず一地区で先行的にプログラムを実施する。5) プログラム評価のために、参加した市民と、プログラム検討・運営の協力を得る地域関係者の双方に調査を行う。6) 研究結果の一次分析結果を踏まえてプログラム修正を行う。7) 2~3の地区でプログラムを展開する。8) 以上4)~6)のプロセスに取り組むことでプログラムを洗練させる。 研究を遂行する上で、プログラムに参加する市民と、運営の協力を得る地域関係者双方のリクルートにあたり候補者選びに難渋することを予測して、倍数程度の候補者をリクルート対象とする。可能な限り、プログラム展開は参加する市民が居住する地域の関係者とマッチングするよう努めるが、困難な場合周辺地域の関係者に協力を得ることとする。 研究プロセスで得た成果は、中間報告の形で緩和ケアおよび在宅ケア関係の学術学会で公表し、得られた意見を後半の介入研究活動に取り入れる。
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