2015 Fiscal Year Annual Research Report
在外教育施設における教育ニーズの多様化に関する事例研究
Project/Area Number |
15H06761
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Research Institution | Osaka Seikei University |
Principal Investigator |
芝野 淳一 大阪成蹊大学, 教育学部, 講師 (10758577)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 教育社会学 / 在外教育施設 / フィールドワーク / 教育ニーズ / グアム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、在外教育施設におけるニーズの多様化という現代的課題について、①子どもの教育ニーズの把握、②教員・学校関係者の教育実践・教育方針の解明という2つのトピックを設定し、在外教育施設のフィールド調査より明らかにするものである。平成27年度は、グアム日本人学校・補習授業校にてのべ15日間の集中的なフィールド調査を行い、①の課題に取り組んだ。まず、在籍者の傾向を把握したところ、ここ3年ほどの間に、小学校低学年を中心に国際結婚家庭や両親アメリカ国籍の子どもが急増しており、6割以上を占めていた(「日本生まれ・両親日本国籍」の子どもは全体の2割に満たない)。また、「日本生まれ・両親アメリカ国籍」の子どもや、「グアム生まれ・両親日本国籍」の子どもも在籍しており、移動を繰り返す子どももいた。こうした在籍者の多様化・複雑化により、教育ニーズをめぐって次の三点の問題が生じていた。第一に、子どもたちの家庭背景や移動経験が複雑なために、学習状況を一枚岩的に捉えることが困難になっていた(ex.グアム生まれ国際結婚家庭であるが日本暮らしが長く英語が話せない、日本生まれ両親日本人だがグアム暮らしが長く日本語が話せない)。また進学先や家庭の社会経済的背景の違いよって学力格差が生じていた。第二に、子どもたちは、出生地、国籍、言語、容姿の「ズレ」を経験しており、アイデンティティや帰属意識をめぐって葛藤を抱えるものもいた(ex. 国際結婚家庭であり、黒人系の容姿をしているが、日本とグアムを行き来しており、第一言語が日本語の子ども)。第三に、子どもたちの希望進路が多岐にわたっており、日本、グアム、アメリカ本土の3つの場所が想定されていた。進路選択は、移動経験、家庭背景、学習状況、アイデンティティ・帰属意識といった要因が影響していた。平成28年度はこれらの結果を踏まえ、上述した②の課題に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画は、現地調査をプランニングし集中的なフィールドワークを実施することがメインであった。渡航日程および渡航回数に若干の変更が生じたが、予定していた調査を実施できた。以上より、研究計画の遂行は、おおむね順調であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成28年度の研究計画は、前年度の研究成果の発表、集中的なフィールド調査の実施、2年間の研究成果のまとめの3つである。前年度の研究成果の発表は計画通り行う予定である。集中的なフィールド調査の実施については、受け入れ先と密に連絡を取り合い、柔軟に調査日程をコントロールしつつ、当初設定した調査期間を確保したい。
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Research Products
(2 results)