2015 Fiscal Year Annual Research Report
個人・評価対象・評価項目のすべてを記述する統合型プリファレンスマップの構築
Project/Area Number |
15H06764
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
橋本 翔 関西学院大学, 理工学研究科, 博士研究員 (80756700)
|
Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 多変量解析 / マーケティング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である「複数の消費者が複数の製品を複数の評価項目で判定した」というデータから消費者のニーズをより詳細に探索するために,本研究では,消費者・評価項目・評価対象のすべてが同一空間に配置され消費者の好みが個人やグループ単位で明らかになる,『統合型プリファレンスマップ(Synthetic Preference Map)』の作成技術の開発を行う。具体的には、3つのアルゴリズム1.製品と嗜好と個人差の同時マッピング,2.同一嗜好傾向・評価傾向のあるグループの同定,3.個人・グループの嗜好傾向のマッピング,の開発を行う. 平成27年度に得られた成果としては、三相主成分分析法を用いることにより、1.嗜好の個人差の傾向をマッピングする手法を開発した。本手法では、従来無視されていた個人差について、各個人が各次元に対して特徴パラメータを持つことを仮定し、各個人の持つ特徴が低次元空間で表現される。人工データおよび実際の評価データに対して開発された統計モデルを用いて分析することで手法の効果検証を行った結果、個人差と刺激差の両方の存在を仮定することによって適切なデータに対しては従来法よりもデータ説明力が大幅に向上することが確認され、実データからも有用な知見が見いだされることを確認した。 今回の成果から、個人やグループの位置関係や嗜好傾向が明らかになるという点でマーケティングにおける小規模市場の探索に寄与するとともに,従来は平均化され失われていた個人レベルのデータを活用することができ,書籍や車など個人によって需要の傾向が異なるような製品に対しての分析の有効性が見込まれる.また、特徴を用いて個人をクラスタリングすることにより、新たな購買層の発見や市場ニーズの探索にも用いられる可能性がある。これらのことから平成28年度の研究では、同一の嗜好傾向を持つグループの同定を目標にしている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではプリファレンスマッピングに適した三相主成分分析を用いた数理的統計モデルの開発を行った.具体的にはまず,既存の手法の拡張可能性について調査し,それらの数理的な背景に関しての知見を得、統計学的な多変量解析モデルを構築した.その後統計モデルから各個人・製品・評価項目に与えられるパラメータを推定するアルゴリズムを考案し,それらをマッピングするアルゴリズムを開発した. 次に、コンピュータ上でアルゴリズムを実現した.そのためにまず,データと統計モデルとのずれを最小化する最小二乗基準を数理的に表現し、コンピュータプログラム上で表現した.これにより,分析の結果得られたパラメータがデータをどの程度説明できているのかが明らかにできた.次に、個人・製品・評価項目のそれぞれに与えられるパラメータをデータの反映がよりよくなるよう繰り返し更新する、反復最小二乗プログラムを作成した. 多変量解析モデルの妥当性を確認するために,統計モデルに合わせたデータをパラメータの真値を定めたもとで人工的に発生させ,プログラムによるデータ説明率を測定した結果、真値を再現できていることが確認された。また、分析によって得られた結果と従来法で得られた結果の比較を行い,従来法では得られなかった個人のパラメータが適切に推定されていることを確認した。さらに,個人の差違を分析に取り入れることによる評価語と製品の位置関係の変化ついて考察するために、従来法で得られるマップと提案手法で得られるマップにおいて製品や評価項目の付置がどのように変化しているのかを計測した結果、製品の配置は維持されていることが確認できた。また同時に従来法とデータの説明率の面からも比較し、データの説明率が向上していることを確認した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では平成27年度で得られた1.商品と嗜好と個人差の同時マッピングの多変量解析モデルを利用し,2.同一嗜好傾向もしくは評価傾向のあるグループの同定,3.個人・グループの嗜好傾向のマッピング,の手法の開発を行う新たなプログラムの開発と実装,評価を行う.具体的な手順は27年度と同一であり、モデリングにおける数理的性質の調査→数理的統計モデルの開発→最適化アルゴリズムの開発→マッピング技術の開発→コンピュータ上での実現→モデルを反映した人工データへの適用→その妥当性の判断→実際の製品評価データへの適用と妥当性・新規性の判断→全体的な手法の理論的・数理的な検証という順で開発を行う. グループの同定では、多変量解析的モデリングにおいて個人の所属クラスターを表すパラメータとクラスター平均を示すパラメータを導入し、刺激の特徴・個人の所属クラスタ・クラスタ中心の特徴・変数の軸への影響の各パラメータを同時に推定するアルゴリズムの開発・実装を行う.アルゴリズムには反復最小二乗表を用いる予定である。また、嗜好のマッピングでは、平成27年度で得られたマップをもとに,個人と製品との位置関係の測定を行い、その距離と好みとの関係を数理的にモデル化するとともに、三相コレスポンデンス分析のなどのマッピング方位も導入し、比較検討を行う.また、選好を説明変数、距離を目的変数として回帰式を立て、分析者が任意の基準を用いて、評価者の嗜好の範囲を低次元空間内にマッピングできるアルゴリズムを構築する. 嗜好のマッピングと実際のデータとの整合性が取れなかった場合は、嗜好データのうち、評価項目で説明される部分のみをマッピングすることを考える.重回帰分析を用いて評価項目で予測可能な部分を計算し、その推定値を嗜好データとしてマッピングする。
|