2015 Fiscal Year Annual Research Report
一粒子・一細胞中の極微量元素定量分析法開発と全元素化学への応用に向けた基礎研究
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15H06768
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
岩井 貴弘 関西学院大学, 理工学部, 助教 (90756694)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 微小量試料分析 / 単一微粒子分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
単一細胞内の微少量元素分析が実現すると,iPS細胞の分化過程の解明等につながると期待されている。本研究では,一つの微粒子や一つの細胞に含まれる,主成分からアトグラムオーダーの極微量元素までの定量分析法の確立を目標として,新しい装置の開発を目指している。本年度は,ドロプレット射出装置と導入管を組み合わせてドロプレット試料導入系を試作し,誘導結合プラズマ分析装置(ICP-MS)に接続してドロプレット試料導入ICP分析システムの構築を行った。ドロプレット射出装置ではピエゾ素子の収縮を利用してドロプレットを射出するが,そのピエゾ素子に印加する電圧を最適化することで,サテライトの無い一滴のみのドロプレットを射出することに成功した。ドロプレット導入管にはT字型のガラス管を用い,ドロプレットの飛翔に合わせて二方向からガスをバランスよく導入することで安定した試料導入を達成した。そして,これらの装置を用いてドロプレット試料をICP-MSに一粒ずつ導入し,180 pLの微小液滴中に100 ppm含まれるCaの質量信号を検出することに成功した。また,共同研究者の協力の下,単一微粒子・細胞分析用の標準物質としてラテックス,磁性ラテックス,PMMA,ホウケイ酸ガラス粒子などのマイクロ粒子の使用を検討している。今後は,試作した装置を用いて標準物質の分析妥当性評価を行うと同時に,ドロプレット試料用の脱溶媒装置の改良,ドロプレット試料導入に適した高速信号取得の最適化を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドロプレット試料導入装置の試作を行ったが,本年度実施予定であった高速信号取得のシステムの構築ができていない。しかし,共同研究者の協力の下,翌年度実施予定であった単一微粒子・細胞分析用の標準物質の開発が進んでいるため,全体的に見ればおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は①ドロプレット試料導入法用の脱溶媒装置の改良,②単一微粒子・細胞分析用の標準物質の開発,③ドロプレット試料導入に適した高速信号取得の最適化を行う。 ①ドロプレット試料導入法用の脱溶媒装置の改良:微粒子が飛翔する経路を直接ヒーターによって加熱する現在の脱溶媒装置では加熱後に細胞が破裂してしまうという問題があることがわかった。そこで,直接導入経路を加熱するのではなく,加熱したガスを導入経路の周辺に流して間接的に細胞を加熱するなどの手法を用いて改善を行う。 ②単一微粒子・細胞分析用の標準物質の開発:材料の選定が完了次第,産業技術総合研究所の協力の下,既知量の試料を含有した試料の作成を行う。 ③ドロプレット試料導入に適した高速信号取得の最適化:オシロスコープを用いて単一微粒子由来のイオン電流の直接取得システムの構築を行い,最適な条件の検討によってアトグラムレベルの検出下限値達成を目指す。 これらの検討が順調に進んだ場合,単細胞藻類中元素の定量分析や,実試料分析への応用を行う。
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Research Products
(3 results)