2015 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症児の関係障碍の形成要因検証:身近な他者の“心的状況の読みとり”能力を介して
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15H06775
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
榊原 久直 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 講師 (90756462)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 子どもの視点に立つ能力 / メンタライゼーション / 関係発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症児と養育者の関係性援助の重要性の高さは広く知られるようになりつつあるが,自閉症児と身近な他者との関係性がもつ固有の特徴は十分に把握されておらず,関係性に影響を与える要因という微視的な視点から相互作用の内実を明らかにすることが,関係性の援助の質的向上において重要な課題である。そこで申請者は,子どもの心的状況を読みとる関わり手の能力に焦点を当て,“関わり手の能力”という観点から,関係障碍の形成・改善要因を検討することを主たる目的として研究を行った。 H27年度は,重度の自閉症者を抱える養育者との個別のカウンセリングの過程と,発達の遅れを指摘される乳児とその養育者とのTheraplay的遊びを用いた母子合同面接の過程とをそれぞれ分析し,母子の関係性障碍の形成要因,およびその改善要因として,養育者のメンタライゼーションという機能の変容過程を質的研究により示した。子ども側に障碍特性と呼ばれる要因が強い場合や,養育者が置かれる環境そのものに強いストレス要因が存在する場合,子どもに心があると認識する機能や子どもからの非言語的コミュニケーションに気づく機能(対他的メンタライゼーション)や,自分自身の感情の動きに気づく機能(対自的メンタライゼーション)の抑制が見られることが明らかとなった。その一方で,“遊び心のある関係性”と呼ばれるようなプレイフルなやりとりや,養育者自身の感情を他者(関与者)が共感的に察して言葉にすること(メンタライズすること)が,ひいては養育者の対他的メンタライゼーション能力を向上・回復させることが推察された。 またそうした事例研究に並行して,生後3か月児と9か月児とその養育者のやりとり遊び場面のビデオ観察を実施し,養育者のメンタライゼーション機能を測定する映像刺激の作成準備を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度の進捗状況としては,事例研究を中心にして,子どもの心的状況の読み取り能力に関してメンタライゼーションという概念が母子関係のアセスメント及びその支援に有用であることを示すことができ,その後の研究の基軸となる概念の選択がなされた。また,メンタライゼーションに関するアンケートの作者である山口氏より,アンケートの使用の許可を得ることができ,H28年度のビデオ刺激を用いた実験研究の準備がより充実したといえる。 一方,ビデオ刺激に関しては,近年の母子合同セラピーであるTheraplayやCircle Of Security(COS)などの支援技法の知見を参考にして,当初の予定から一部内容を変更し,あいまいな刺激(3か月児の情動表出)や,喜怒哀楽の多様な感情場面の収集を追加で行うこととしたため,現在データの収集中である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に関しては,上述の通り,メンタライゼーションという概念を中心に,ビデオ刺激を用いた実験研究に加えて,メンタライゼーション尺度を用いたアンケート研究との併用研究を実施することを新たに予定している。 ビデオ刺激の収集に関しては,子どもや養育者の顔が映像に映るという個人情報の露見という研究の性質上の課題があるため,協力者の募集には期間を要することが予想されている。特に生後3か月児の養育者とコンタクトを取ることは,9か月児の養育者の場合に比べてもより困難であり,また養育者が一過性の抑うつ的な状態に陥っているリスクも3か月児の場合の方が高いことを鑑みると,3か月児のデータはより入手が困難になる可能性がある。そのため,9か月児のデータ(より明確な刺激)による映像刺激の作成と,3か月児のデータ(あいまい刺激)による映像刺激の作成とにタイムラグが生じ,H28年度中には主に前者の刺激を用いた実験研究が中心となる可能性がある。
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Research Products
(3 results)