2015 Fiscal Year Annual Research Report
教育実践をめぐる関係性の動態的記述と教育実践リフレクションモデルの構築
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15H06782
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Research Institution | Kobe Tokiwa University |
Principal Investigator |
國崎 大恩 神戸常盤大学, 教育学部, 講師 (90756313)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 教育実践の振り返り / 教育的合理性 / 実践の動態的記述 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、授業研究において行われる教師たちによる教育実践の振り返りに着目し、関係論的視点から、その有り様を明らかにすることにある。平成27年度は研究スタートとして、文献による基礎研究とフィールドワーク研究及びワークショップを行った。具体的な研究内容とその成果については以下の通りである。
①「教育実践をめぐる関係性の動態的記述にむけた基礎研究」【文献研究】-教師たちによる教育実践の振り返りを分析するための方法論を理論的に構築するための基礎研究として、「人類学の静かな革命」と呼ばれる諸研究等を参照しながら、教師たち自身による教育実践の振り返りにおいて雑多な諸関係が「教育的合理性」のもとで関係づけられていく様を描き出すための方法論的課題と可能性について明らかにした。 ②「日米の授業研究に関するフィールドワーク」【フィールドワーク研究】-日本とアメリカ(ニューヨーク)において、授業研究に関するフィールドワークを行い、人やモノが複雑に絡み合った雑多な諸関係が教育実践という「合理性」のもとで相互に関連づけられていく様子とそれによる教師の変容の過程を分析することができた。また、フィールドワークを通して、①の基礎研究において構築された理論的基盤に具体性が与えられただけでなく、理論的課題も明らかとなった。 ③「ワークショップの開催」【研究成果の普及】-平成27年度の研究総括として新任教員を対象としたワークショップを開催した。その結果、本研究の一部成果を普及することができたとともに、その有効性についても見通しをもつことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は2年間の研究計画において実施され、平成27年度は基礎研究期間として位置づけられている。平成27年度は以下の理由により「おおむね順調に進展している」と判断できる。
①人々の実践を関係論的視点から分析するための方法論的基盤を構築するため、「人類学の静かな革命」と呼ばれる近年の人類学における諸研究の成果と課題を明らかにすることができた。また、授業研究や教師の省察に関する教育学的アプローチに関する諸研究についてもその成果と課題を明らかにすることができた。ただし、それらを統合することはできておらず、教師たち自身による教育実践の振り返りにおいて雑多な諸関係が教育実践のもとで関係づけられ、さらにそのことによって新たな実践の可能性が切り開かれていくというダイナミズムを描き出す方法論を確立するための理論的基盤を構築するには至っていない。この統合作業は文献研究だけでなく、さらなるフィールドワークとともにすすめていく予定である。 ②「日米の授業研究に関するフィールドワーク」に関しては当初の計画よりも大幅な進展があった。とりわけ、アメリカにおけるフィールドワークにおいて多様な授業研究にふれることができ、さらに多くの現職の先生方と意見交換をすることができた。そこで得られた成果は文献を中心とした基礎研究に大きく貢献し、基礎研究をより発展的に修正する方向性を得ることができた。 ③「ワークショップの開催」に関しては平成27年度に新任教員のみを対象としたワークショップをおこなった。当初は現職教員や研究者も含めた大規模なワークショップの開催を計画していたが、フィールドワークを通して本研究の課題が明らかとなったため今年度は規模を縮小してワークショップを実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は2年計画であり、次年度の平成28年度は本研究の最終年度にあたる。そこで以下の点に留意しながら本研究を完成させていく。
①平成27年度は基礎研究期間として、それぞれの基礎を固めるべく理論研究とフィールドワーク研究をそれぞれの視点で行ってきた。今後はこれまでの成果等を踏まえながら、理論研究とフィールドワーク研究を統合し、教師たちによる教育実践の振り返りを関係論的視点から解明・分析するための理論的基盤を構築する。その際、「教育的合理性」の概念を核としながら、教育実践の特異性についても明らかにしてみたい。 ②研究成果をより豊かなものとするためには、フィールドワークをさらに拡大していく必要がある。とりわけ、平成27年度に行ったフィールドワークを継続的に行うことによって、教師や学級・学校の変容過程がより明らかとなるはずである。あわせて、新たなフィールドワークも行うことによって、本研究の射程をひろげていく。 ③研究成果を普及させるためにも、学会発表や論文投稿を積極的に行っていく。さらに大規模なワークショップを開催することにより、研究成果の普及と今後の研究課題についても明らかにしてみたい。
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Research Products
(2 results)