2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06793
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
河瀬 宏則 九州産業大学, 経済学部, 講師 (30755781)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 自己株式の取得 / 買付動機 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の作業はデータベースの整備作業と研究協力者とのリサーチ・デザインについての議論が中心であった.データベースの作業をして判明したことには,2008年から2012年までの期間でおよそ2,000件程度の観測値が取得できるが,ここからサンプルの選択基準を満たすものに限定したところ,その観測値数は約4分の3に減少している.この観測値のうち,約50%は企業業績に関係が強く,株価に影響を与えると思われる企業情報の開示と同時に自社株買いを実施していることがわかった.これは事前の予想と同じく,自社株買いが何らかの企業情報と同時に公表される傾向にあることを思わせる.本研究では株主総会ではなく取締役会で決議されているものに限定しているが,かりに取締役会決議が月に一回開催されるとすれば,四半期決算と同時に公表される確率は4/12であるため,約33%になると期待される.しかし,実際にはこれよりも多い.これはあえて何らかの企業情報と同時に公表することを意図していることを思わせる.次に,研究協力者とのリサーチ・デザインについて,何をもって自社株買いと同時公表される企業情報がグッド/バッドかを判定するかを議論した.結論としては,単に1つの指標でグッド/バッドかを判定するのは難しく,複数の指標で判定する必要があるというものである.その理由としては,同時公表される企業情報がグッド/バッドなのかは,投資家の期待と比べてグッド/バッドかであると考えられる.そこで投資家がどの数値を用いて期待を形成しているかを考慮する必要があり,例えば会計利益や経営者による利益予想等,選択肢が複数ある.従って,当初の研究計画では一つの測定基準でしか想定していなかったが,研究協力者との議論を経て,グッド/バッドかの判断基準を複数設けることとした.当該年度における研究結果の概要としては以上である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データベースの整備作業が終了し,分析作業に移っている.これは申請段階の計画通り進んでいる.データベースは,自社株買いデータベースの借用,アナリスト・コンセンサス予想データベースの購入,そして会計数値に関するデータベースから構成されている.なお,研究実績の概要で述べたように,リサーチ・デザインについて申請段階と異なり,グッド/バッドの判定基準を単一のものから,複数の基準へと変更している.
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り,分析作業を進める.ただし,グッド/バッドの判定基準が複数に増えたものの,本研究の主張に対して妥当な判定基準を網羅しているかどうかは不明であるため,今後も十分な検討が必要かもしれない.分析が終了してから再度の検討が必要にならないよう,研究協力者と十分な議論を重ねて,リサーチ・デザインの完成度を高めておくことが重要であると考えている.
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Research Products
(2 results)