2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06797
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
栗田 昇平 福岡大学, スポーツ科学部, 助教 (40759255)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 体育授業 / 話し合い活動 / 指導方略 / ゴール型 / ゲーム理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の本研究の実績として、ゴール型理解度調査票の作成とその実施による妥当性の検証、及びそれを用いた話し合い活動の効果の実証が挙げられる。 まず、ゴール型ゲーム理解度調査票の作成にあたっては、調査を行う小学校の年間指導計画の兼ね合いで種目をサッカーとした。問題作成の際には、Blomqvist et al.(2000,2005)や鬼澤ら(2004)の作成した調査票を参考にモデルとなる問題案30問を作成し、体育科教育学が専門の教員2名,及びサッカー指導を専門とする大学教員1名と協議の上、最終的に11問を選定した。次に、作成された調査票を、小学校5、6年生計131名に対して実施した。全体の得点の平均値は、8.6(±1.57)であり、ゴール型ゲーム経験者の平均値が9.31(±1.44)、ゴール型ゲーム未経験者の平均値が8.55(±1.55)であった。対象校として選定された小学校では、サッカーへの取り組みが盛んであるという事実もあったため、全体として平均値が高めであったが、経験者と未経験者の間の差異が認められたことから、本調査票の妥当性はある程度確保されているものとみなした。 次に、1回目の調査票の実施後に児童6名で1グループを構成し、調査票に記載された問題の解決方法について話し合い活動を行わせた。話し合い活動後に実施した調査票の結果では、全体が9.18(±1.37)、ゴール型ゲーム経験者が9.48(±1.06)、ゴール型ゲーム未経験者が9.12(±1.37)とすべての群において向上がみられた。また、標準偏差も小さくなり、回答傾向の収束が確認された。このことから、話し合い活動による知識や情報の共有が行われたことが明らかになった。体育授業において、話し合い活動の効果について示された知見は実証的に検証されてこなかった。そのため、本研究で示された成果は一定の重要性を持っているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、ゴール型ゲーム理解度調査票の作成とその実施及び分析までを行う計画で進行させ、概ね計画通り進行させることができたといえる。 まず、ゴール型ゲーム理解度調査票の作成にあたっては、研究協力者の協力を仰ぎ、客観的な視点も踏まえながら11問の問題で構成される調査票を作成した。その後、作成された調査票を1つの小学校に所属する5、6年生計131名に対して実施した。対象校である小学校の選定に際しては、福岡大学の地域ネット推進センターと連携を行い、これを可能とした。また、調査票は、対象校のサッカーの授業の一環として実施させてもらった。具体的には、話し合い活動の前後に調査票の実施を行い、調査票の問題の回答の仕方について学習者同士で話し合ってもらうことで、対象者である児童の学習促進を意図した。平成27年度の進捗状況としては、第一回目の調査票の回答傾向の算出と話し合い活動前後の回答傾向の変容、及び話し合い活動の実態として逐語記録の作成までを行った。逐語記録の分析は、平成28年度の4月及び5月の間に行う予定である。 研究計画の進捗状況を概ねとしたのは、調査校の追加の必要が出てきたからである。本調査を行った小学校は、学校の風土としてサッカーが盛んな小学校であった。そのため、一般的な小学校とは異なる回答傾向を示した可能性がある。そのため、標本数を増やすことによって、回答の妥当性及び信頼性の確保が求められる。これは当初予想していなかった作業であり、これが進捗状況を概ねとした理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の課題として想定されるのは、対象校の追加の必要性と逐語記録の分析による話し合い活動の類型化である。 今回のゴール型理解度調査の実施を行った小学校では、日常生活からサッカーの活動が盛んであった。今回の事例のように各学校に根付いた特有の風土によって結果が影響を受けることが想定される。そのため、本調査票の実施をさらに多くの小学校で行うことによって、妥当性と信頼性の確保を本研究の当初の趣旨と合わせて行う必要性があることを実感した。これには、福岡大学の地域ネット推進センターとの協力体制を構築した上で対策を講じたいと考える。小学校に調査の依頼を行う際には、小学校側との信頼関係の構築も必要となる。この点において、地域ネット推進センターは、多くの小学校との様々な活動に貢献してきた実績があるので、連携することによって、先に挙げた問題の解決に大きく寄与することができると考える。 次に、逐語記録の分析に際しては、質的研究データ分析ソフトであるNvivoを使用し、妥当性と信頼性を高めることを計画している。Nvivoは我が国においても研究実績の豊富なソフトウェアの1つである。質的データの分析には、通常多くの時間を割いてしまうことと、分析プロセスの透明性の確保が課題として挙げられていた。この点をNvivoを使うことによって解決できると考えている。加えて、Nvivoを利用した研究実績の豊富な研究者にも協力を仰ぐことによって、その利用効果の向上にも努めたい。
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