2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06817
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Research Institution | Niihama National College of Technology |
Principal Investigator |
芥川 祐征 新居浜工業高等専門学校, 一般教養科, 助教 (80757542)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 校長職 / 専門職 / 経営管理活動 / 戦後教育改革 / 民間情報教育局 / 教育刷新委員会 / 校長免許状 / 教育職員免許法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、連合国軍(GHQ/SCAP)の対日占領政策の下で教育改革が進められていた戦後初期(1945.8~1952.4)において、民主的な学校経営を行うために専門職として設置された校長職について、そこでの構想の特徴と課題を明らかにすることを目的とした。今年度は以下のような校長職専門職構想の特徴を明らかにした。 1.アメリカ側の校長職専門職構想: 民間情報教育局(CIE)は、戦前・戦中の日本にみられた中央集権型の教育行政の下での画一的な教育を批判するとともに、戦後においては個人の能力と適性に応じた教育を民主的な地方教育行政が支えることを求めた。そこでは、教育活動に関する知識・技能を基礎とし、教員に対する技術的援助や専門的助言を行うための専門職として校長職が構想され、また、国立大学教育学部の校長養成課程において専門的な準備教育を行うことが求められた。 2.日本側による校長職の専門職構想の修正過程: 文部省は『新教育指針』において、民主的な学校経営を実現するためには、戦後の校長職に対して経営管理活動に関する能力だけでなく、人格と情意(愛情、心遣い、献身的姿勢)に関する要件も求めた。また、教育刷新委員会第8特別委員会において、校長免許状を取得する場合には要件(学歴、経験、人物など)を満たした申請者が選考委員会の許可により交付を受ける方式をとることが提案された。 3.校長職の資格法制の成立過程における専門職構想の理念: 戦後初期の帝国議会・国会における諸法令(学校教育法、教育職員免許法など)の成立にともない、校長職は独立した身分をもつ学校職制として設置され、教育公務員として法的に位置づけられた。そして、その資格要件については、上記の構想を一部修正し、教員としての勤務経験を必須のものとして、大学などにおける単位修得、または、校長講習の受講などにより校長免許状を取得することが法的に規定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.アメリカ側の校長職専門職構想: アメリカ側の文書史料として、GHQ/SCAPの教育指令とそれに基づく報告書『日本の教育』および『第一次米国教育使節団報告書』については蒐集および分析が完了している。ただし、国立国会図書館憲政資料室に所蔵されてある“CIE Records”内の会議文書“Report of Conference”については、マイクロフィッシュ形式で保存されてある史料の総数がきわめて多いため、蒐集および分析の途中である。 2.日本側による校長職専門職構想の修正過程: 日本側の文書史料として、文部省による「新日本建設の教育方針」および『新教育指針』、米国教育使節団に協力するための『日本側教育家委員会報告書』と、その後に同委員会が改組され成立した『教育刷新委員会・教育刷新審議会会議録』について、いずれも蒐集および分析が完了している。 3.校長職の資格法制の成立過程にみられる専門職構想: 戦後初期の校長職を規定する諸法令(学校教育法、教育職員免許法等)に関する法律案の成立過程に関与していたとされる、当時の文部省教職員課長であった玖村敏雄(所蔵:山口県立山口図書館)、文部大臣・広島大学学長であった森戸辰男(所蔵:広島大学文書館)の私有文書については蒐集および分析が完了している。しかし、当時の東北大学教授であった細谷恒夫(所蔵:東北大学史料館)の私有文書については、史料の蒐集および分析の途中である。 以上、戦後初期の日本における「民主的解放的」学校経営論の受容過程に関して、そこでみられた校長職専門職構想の特徴を、求められていた資質能力および職務内容という視点から分析し、論文として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、『文部省手引』と日米双方の学校経営研究の分析によって占領下日本における校長職の専門職構想の定着過程を解明し、行政文書と年史史料などの分析によって政府・自治体・各学校レベルでの校長職の専門職構想の課題を明らかにする。そのため、今後は以下のような研究作業を行うこととする。 1.校長職の資格・養成制度に関する文部省の解釈: 文部省がCIEの指導下の教育改革において、民主的な学校経営のあり方を各学校に普及させるために刊行した『文部省手引』などを分析し、それらの原案の作成過程についても明らかにする(所蔵:国立国会図書館憲政資料室)。 2.日米の学校経営研究における校長職の専門性(知識・技能): アメリカ側の史料として、占領下日本の教育指導者講習会(IFEL)において使用されたprincipal-ship研究に関する書籍(所蔵:教育課程文庫)を分析する。また、日本側の史料として、各学校における萌芽的な学校経営研究、文部省手引の刊行後における各自治体の学校経営研究、新制国立大学における教育学研究(所蔵:国立国会図書館)を分析する。さらに、それらの記述から日本の学校経営研究におけるアメリカ学校経営論の影響力についても考察する。 3.政府・自治体・各学校レベルにおける校長職の専門職: 政府による報告書「日本における教育改革の進展」および「教育研究協議会の設置に関する通達」など(所蔵:国立教育政策研究所)を分析し、都道府県史誌(所蔵:国立国会図書館)および各学校史誌(所蔵:野間教育研究所)についても分析する。 4.校長職の資格・養成制度の改廃過程にみられる校長職の専門職構想の課題: 『国会会議録』(所蔵:国立公文書館)における教育職員免許法・教育公務員特例法などの改正過程を分析し、日本教職員組合法制部の運動資料(所蔵:日本教育会館教育図書室)についても分析する。
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Research Products
(1 results)